第18章 硫黄降る街
――うそつきなおひめさま。
「君がいなくなったその刹那、麻痺していた感情が一度だけ黄泉返った。」
「バカな!そんな根拠の無い憶測で持ち場を離れるな!こっちは人命が掛かってるんだぞ!」
「でも!監視官も執行官も全て出払った中央区の官庁街はもぬけの殻ですよ!アイツらの手に掛かったら警備ドローンなんて案山子も同然です!このまま後手に回っていたら今度こそ取り返しの付かない事態になります!せめて私達だけでも!」
暴動が更に激化するのを見ながら、宜野座は舌打ちをした。
「分かった!まずは君達が先行して状況を確認しろ!こちらは引き続き各地の鎮圧を続行する!何かあったらすぐ連絡を!」
「はい!」
慎也が睨む先には、ノナタワーの姿が見える。
「――見えて来たぜ。」
縢が呟いた頃、丁度槙島達はノナタワーの中へと入って行った。
「あぁ、姫。少し聞きたい事があるんですが、宜しいですか?」
「チェ・グソン?改まって何?」
槙島の隣を歩く泉は不思議そうに首を傾げる。
「幸せが壊れなければ、貴方はずっと槙島さんの側にいましたか?」
「――この件が片付いたら答えてあげるわ。」
泉の答えに、槙島はふっと哀しそうに笑った。