第18章 硫黄降る街
――全てを知ったその先に。
「平然とそんな言葉が吐き出せる自分こそ酷い奴なんだって自覚すれば?」
「コイツらは貴方が行う破壊の先を見たがっている連中です。」
「破壊の先、か。先があれば良し。無ければ――、それはそれで受け入れる。ネットでの情報操作は?」
槙島が問えば、パソコンを見ていた泉が答える。
「事前に仕掛けたAIが活動中です。」
「そう。――泉。ここからはもう戻れないよ。それでも君は僕と来るかい?」
そっと泉を立たせれば、槙島は優しく問うた。
「――拒否権なんて与えてくれないくせに。」
その言葉に、男は満足そうに笑った。
「やってくれるぜ、槙島聖護!」
苛立った慎也に、朱が声を掛ける。
「でも待って下さい。このヘルメット犯罪に槙島が関与していると言う決定的な証拠はまだ見付かっていません。」
「考えてみろ。普通の人間はシビュラシステムを無効化する装備を作ってみようと思った時点で色相が濁る。それを設計し、量産し、撒いた。下準備に数ヶ月は掛かっているだろう。部品の発注、流通の手配、街中のスキャナーを避けながら出来る事じゃない。」
「――!!」
「あのヘルメットを作れるのは、ヘルメット無しにシビュラシステムに対抗出来る人間だけだ。」
「シビュラシステムの盲点を突いた集団サイコハザード。それが槙島の目的ってコト?」
縢の言葉に、朱が首を振る。
「――違う。だって槙島の犯罪はいつだって何か答えを探すようなところがあった。酷い暴動だけどこの混乱だけが目的とは思えない。」
「監視官に賛成だ。こんな暴動を見物して喜ぶような犯罪者だったならもっと楽に逮捕出来る。――それに。」
慎也は鋭い目で、前を見据えた。
「そんな男の為に、アイツは全てを捨てたりしない。何かあるはずだ。」
「狡噛さん――。」
「――狡チャン。今回の事件、泉が関わってると思う?」
走り出した車の中で、縢が問う。
「あぁ。絶対にアイツも出て来るだろう。――二人とも。泉を見つけたら絶対に取り逃がすなよ。捕まえてくれ。」
「――そりゃあまぁ。でもさ~、泉に本気で抵抗されたら正直俺らじゃ敵わないんじゃね?」
その言葉に、朱はギョッとする。