第17章 甘い罠
――そして世界は、終焉へのカウントダウンを始める。
「意味のわからないことは嫌いよ。だから、あなただって嫌いなの。」
「間抜けだったぜ。犯行が余りにも異常で何となく通り魔的な犯罪に見えていたが、2件目の被害者――。あれだけ憎しみを込めた手口なら寧ろ動機がなきゃ可笑しい。」
解析に当たっている志恩の元に慎也から通信が入る。
「何よ、この忙しい時に!」
『調べて欲しい事がある。』
「もう色々と調べてる最中なんだけどぉ?!」
『ちょっとで良い。アンタを情報分析の女神様と見込んで頼んでる。』
その言葉に、志恩は笑った。
志恩の解析で伊藤純銘と言う容疑者が浮かび上がって来る。
伊藤の家に押し入れば、人の気配が無かった。
「――留守、か?」
押し入った部屋の中は、被害者である藤井博子の写真がズタズタに切り裂かれていた。
「――当たりだ。近頃ずっとこう言う気分だったんなら、そりゃあ部屋の外には出られない訳だ。」
慎也と征陸が部屋を見ている中、朱は他の部屋を探索する。
「うわぁぁ?!」
「――?!」
朱の声にドミネーターを構えれば、そこには朱の映像が浮かんだ。
『犯罪係数、32。刑事課登録監視官。』
「――ッッ?!」
「お、追わないと!」
止まったままの慎也に、朱は急かすように言う。
「監視官!アンタの犯罪係数は?!」
「はぁ?!」
意味が分からず慎也を見れば、彼はドミネーターを朱に向けていた。
『犯罪係数、32。刑事課登録監視官。警告。執行官による――。』
「そう言う事か。」
全てを悟った慎也はドミネーターを下げる。
「手品の仕掛けが分かったぜ!」
そう叫んだ瞬間、慎也は走り出す。
朱は慌てて後を追った。
「志恩!この近辺で人がいない区画は?!」
『いきなり何よ?!どう言うコト?!』
「ホシは側にいる人間のサイコパスをコピーしてる!あのヘルメット自体が他人のサイマティックスキャンをしているんだ。」
『――そうか。じゃそのスキャン圏内から人払いをすれば――。』
「あのヘルメットはガラクタになる!急げ!」
『え~っとねぇ。4ブロック先に資材倉庫!フルオートメーションだから職員はゼロ!』
「そこに追い込む!近隣のドローンを導引して誘導を!」
『オッケ~!』