第17章 甘い罠
――守れないものを、約束なんて呼ばないで。
「君に雨が降り注ぐと云うのなら、濡れないように僕が払おう。」
「そうじゃない。反応として正常過ぎる。見てみろ。こっちがエリアストレスの変異。犯人の色相変化とそっくりそのまま推移している。」
「――あ、ホントだ。」
「コイツ――。周囲の目撃者と全く同じメンタルで行動してたって事になる。」
慎也はキョロキョロと辺りを見回す。
「――くそ。こう言う時にアイツがいれば――。」
ガシガシと頭を掻く慎也の言葉に、宜野座が叱責を飛ばす。
「――狡噛。」
叱責の意味を理解した慎也は、大人しく両手を上げた。
「果たして彼らはすぐに仕掛けを破れるかな?」
槙島の問いに、チェ・グソンが答える。
『種を明かせば簡単な事でね。ただ若干、融通の利かないところもありまして。感度は大体30メートル圏内ってくらいですか。しかしまぁ範囲内に一人でもクリアカラーの人間がいればヘルメットの中で何を考えていようが何をやらかそうがお構いなし。刑事課の連中もその内に気付くでしょうよ。現場に居合わせた人間のスキャンデータを全部照合すれば、まるっきり同じ色相の人間が二人いたってね。』
『監視官~!また緊急事態!』
「今度はなんだ?!」
『高速道路で現金輸送車が襲撃されたって。』
「――現金輸送車って――。」
全員の目が合えば、慎也が問う。
「志恩。ソイツらもヘルメット装着者だろ?」
『さっすが!その通り!数は3人。全員工具類で武装。さっきの事件とは別口ね。』
「どう追い掛けます?」
「班を二つに分ける。縢、六合塚。一緒に来い。――君達は引き続き薬局襲撃犯を。俺達は現金輸送車を追う。」
「しっかし武装強盗ねぇ。コイツが通用しない相手なら俺達丸腰と変わらないんじゃないっすか、ギノさぁん?」
縢が自分の腰にあるドミネーターを叩いて見せる。
「余計な事は考えるな!行くぞ。」
3人がその場を離れれば、残された朱はふと呟く。
「それにしても――。犯人はなんでこんな事を?」
「あ?――なんでってそりゃあ――。ッッ?!」
「――どうした?」
何かに気付いた慎也に、征陸が問う。