第15章 閑章:その弐
「――そうかもね。羨ましかったのかも知れないな。俺には分からない感情だったから。」
「縢くん?」
「俺はね、朱ちゃん。一回泉に惚れてるかもって思った事があったんだよ。――嫌だな。怒らないでよ、狡チャン。」
ジロリと睨まれ、縢は苦笑する。
「でもね、どうも違ったみたいだ。俺が憧れてたのは泉と狡チャンが二人でいる時のあの空気であって、泉本人じゃなかった。つかどっちかって言うと姉ちゃんみたいなんだよな。泉って。」
「――アイツもお前の事、弟みたいだって言ってたぞ。」
その言葉に、縢は笑う。
「そっか。――で?兄サンとしてはどうするわけ?」
「その呼び方やめろ。――『愛してごめんね』って言ったんだ。」
「え?」
急に呟いた慎也に、朱は首を傾げる。
「あの地下で泉は俺を助けに来た。その時に『愛してごめんね』って謝ったんだよ。」
「――『愛してごめんね』、か。泉は罪作りだなぁ。」
縢は皿に盛った料理を慎也に渡してやる。
「――泉は槙島と一緒にいるんだろう。それは間違いない。」
「槙島と日向さんって、どう言う関係なんでしょうか?」
朱が問えば、慎也は一枚の写真を取り出す。
「これ――。昔の泉と、――槙島?!」
「どうやら泉は昔から槙島と知り合いだったらしい。」
「狡チャン――。」
慎也は装った料理を食べながら、鋭い目付きで呟いた。
「この事件は俺の手で明らかにしてやるよ。――絶対にな。」
それは確固たる言葉だった。