第15章 閑章:その弐
――目を閉じれば、ホラ。
「君が俺の中から君を抜き出してしまうのなら、ぽっかりと空いた穴はこんなにも大きい。」
「縢くん、狡噛さんのとこに行くって良いの?」
「い~のい~の。どうせ狡チャン、一人で鬱々としてるんだから。」
「でも――。」
朱が言うより早く、縢は慎也の部屋のチャイムを鳴らす。
『――誰だ?』
「うわぁ。予想通り。狡チャン、生きてる?」
『縢か。何の用だよ?』
不機嫌MAXの慎也の声に、縢は笑う。
「開けてよ、ココ。ど~せ狡チャン、何も食べてないだろうと思って差し入れ持って来た。」
そう言えばしばらくしてから、ロックが解除される。
「おっじゃま~。って、うわっ!どしたの、コレ!掃除しなよ!」
中に入れば散乱した洗濯物やゴミに、縢は目を丸くする。
後ろから入って来た朱も、中の散乱具合に唖然とする。
「――狡噛さん。」
「なんだ。アンタも来たのか、常守監視官。――仕方ねぇだろ。家の中の物は泉が全部やってたから俺はどこに何があるか分からん。」
慎也は面倒臭そうに言えば、煙草に火を点ける。
その様子を見ながら縢は苦笑した。
「全く。狡チャンは泉に依存し過ぎなんだよ。――こうなった時が一番怖かったのにさ。」
「うるせぇな。――今更だろ。」
忌々しそうに舌打ちをした慎也に、朱は控え目に問う。
「――狡噛さんはまだ日向さんのコト――。」
「まだってなんだ。俺はアイツの事を疑った事はねぇよ。それは今までもこれからも、だ。」
言い切った慎也に、縢は持って来た料理をタッパーから出しながらため息を吐く。
「ほ~んと、泉と狡チャンってラブラブだよねぇ。昔っからそう。」
「なんだ、羨ましかったのか?」
からかうように言った慎也に、縢は一瞬ムッとするがすぐに笑った。