第13章 深淵からの招待
――確かに救いを求めていたのに。
「少しずつ、けれど急速に、惹かれていく。惹かれていく。」
「局長命令で公開捜査は出来ないんですよね?」
「あぁ。なにしろデリケートな問題だ。専門のチームが調査している。その結果が出るまで地下で起きた事は他言無用だ。」
言葉を選びながら言う宜野座に、朱は尚も畳み掛ける。
「調査の結果を待っていられません。非公開では手がかりは集まりにくい。モンタージュが必要です。」
「――しかし。」
朱の意志は固かった。
「その為に犯罪係数が上がったとしても構いません。私は執行官になってでも槙島聖護を追い詰めます。」
「そんな事を軽々しく口にするな!」
「――宜野座さん。大丈夫ですよ。私ってサイコパスが曇りにくいのだけが取り得ですから。」
言葉に詰まった宜野座を庇うように、志恩が言う。
「――準備完了。朱ちゃん。」
「はい!」
促されるままに、朱は器具を頭に付ける。
「貴方の体調とサイコパスはずっとモニタリングしてるからね。」
「唐之杜さんを信用します。」
「オーケーオーケー!お姉さんに任せてね?悪いようにはしないから。犯人と遭遇した時の事を良く思い出して。」
「――はい。」
「その記憶に関わる脳内の信号をキャッチしたら増幅します。かなりの精神的負担が予想されるケド――。」
真面目になった志恩の言葉に、朱は抑揚の無い声で返す。
「覚悟の上です。」
「良し。始めるわよ。」
そう言えば、志恩はスタートボタンを押した。
その瞬間、朱の脳内にゆきが殺された時の状況が蘇る。
「――ッッ?!」
「おい!」
「分かってる!」
宜野座が叫べば、志恩はキャンセルボタンを押す。
「しっかりしろ!常守監視官!常守監視官!――常守!常守朱!」
叫んだと同時に、宜野座が朱の頬を打つ。
「――すまない。」
「――ッッ、宜野座さ――!」
「あぁ。大丈夫か?――常守!」
その瞬間、朱が咽る。
「メモリースクープは成功!早速イメージングシェノに取り掛かるわ。」
志恩がモニターを弄りながら声を上げる。
「彼女のサイコパスは?!」
宜野座が叫ぶように問えば、志恩は視線を鋭くした。