第2章 成しうる者
――そうしてまた、空回り。
「僕が君を見てどんなに苦しんでいるかなんて、君は欠片も知らなくていい。」
「狡噛さんの容態がここに来れば分かるって聞いたんですけど。あの――、日向監視官と狡噛さんって?」
「あぁ、それね。見れば分かるでしょ?あの二人は恋人同士。いくら医師免許持ってるからって分析室に健康管理まで押し付けるお役所ってどう思う?そりゃあアタシも潜在犯ですけどぉ?だからっていくらでも便利に使って良いって法はないでしょ?」
「――はぁ。」
愚痴を零す志恩に、朱は曖昧な返事をする。
「えぇっと。アナタ、朱ちゃんだっけ?監視官なら公安局の出世コースでしょぉ?さっさと偉くなっちゃって組織改革して頂戴よ。まずは刑事課備え付けのプールとバーラウンジをこしらえるところからお願い!」
「え?いや、その――。私より日向監視官にお願いした方が――。」
苦し紛れの言い訳に、志恩は苦笑する。
「泉?あの子はダメよ。出世に興味なんてないもの。それにあの子はいずれ寿退社でもするでしょ。」
「はぁ――。あのそれより狡噛さんの容態って?」
「あ、そうね。まぁ脊髄に良い感じに直撃かましてくれたからね。まだ本調子って訳には行かないわ。立ったり喋ったりはちょっとね。勿論ベッドのお供も無理。――ちなみに今のアレはかなり無理してる感じ。――泉!アンタいい加減にしなさい!慎也くんも!無理しないで寝なさい!」
いつまでもイチャイチャしている二人に青筋を立てれば、志恩は思わずスピーカーで怒鳴る。
『ちょっとエッチ!覗き見しないでよ!志恩のバカ!』
「どっちがバカだっつ~の。こっちだって見たくないわよ、アンタのラブシーンなんか。」
泉にそれだけ言えば、志恩は映像ごとスピーカーも切る。
それを朱は何とも言えない表情で見ていた。
「――顔だけでも見て行きたいって言うなら面会ぐらい大丈夫だけど?どうする?」
見兼ねた志恩の言葉に、朱は首を横に振る。
「い、いえ。それなら別に。」
「今日一日安静にしてれば後遺症も抜けるわよ。また明日の朝にでもいらっしゃい。」
「――はい。あの。」
「ん?まだ何か?」
「日向監視官、怒ってましたか?」
「さぁ。自分で確かめて御覧なさい。」
志恩は苦笑しながら、そう答えた。