第2章 成しうる者
――そして、後悔は懺悔へと変わる。
「記憶の中の君はいつも泣いてばかりで。ただ、ただ、笑ってほしいと、そればかりを願ってた。」
デスクに戻って事務作業をしていた朱は、タブレットが壊れた事に気付く。
「――あの。タブレットの予備ってありますか?」
「ん?備品の予備は狡噛執行官が使用中デ~ス!」
ゲームをしている縢が茶化すように言う。
「あの、でもその狡噛さんは――。」
「パラライザーで撃たれて治療中デ~ス!」
その瞬間、バチンと良い音がする。
「イッテェェ!」
「コ~ラ、秀星。何、苛めてるの?お姉さんが許さないわよ。」
そこにはいつの間にか戻って来た泉の姿があった。
「泉!――だってよ!」
「全く。ハイ、コレ。私の使って良いわよ。」
自分の席からタブレットを取れば、泉はニッコリと笑う。
「あ、有難うございます!――日向監視官、あの!」
言い辛そうな朱に、泉は苦笑する。
「ごめんね。さっき慎也に会いに来たんですって?遠慮せずに入って良かったのに。」
「あ、いえ――。あの、昨日は!」
言葉の続きが分かってしまって、泉は笑みを消す。
「――ごめんなんて言わないでね。そうしたら私は貴方を許せなくなるから。」
「――え?」
朱が聞き返した瞬間、ドアが開く。
「悪ィ悪ィ。遅くなっちまって。あれ?今日の宿直ってお嬢ちゃん?」
「あ、はい。」
「昨日の今日で大変だねぇ。まぁ平和な一日になるように祈って――!」
征陸がそう言った瞬間に、警報が鳴る。
『エリアストレス上昇警報。足立区伊興グレイスヒル内部にて規定値超過サイコパスを計測。当直監視官は執行官を伴い直ちに現場へ直行して下さい。』
「言ってる側からそれかよ――。」
うんざりする征陸に、泉は踵を返す。
「智己さん。慎也の代わりに私も行くわ。」
「いや、何。それには及ばんさ。泉ちゃんは狡についててやれ。さぁ出動だぜ、監視官殿。」
泉を押し留めれば、征陸は朱に言う。
「え?!あ――。」
朱はグッと息を呑み込んだ。