第2章 成しうる者
――語られない、真実。
「こんなに好きになれるなら、もっと早くに触れれば良かった。」
慎也が目を覚ますとそこは知らない天井だった。
「――?」
ぼうっとする頭で腕を動かせば、そこにはベッドにうつ伏せて寝ている愛しい女が目に入った。
「――泉。」
「ん――。慎也。目が覚めた?気分はどう?」
「あぁ、もう大丈夫だ。スマン、心配を掛けたな。」
慎也の声で目を覚ませば、泉が目を擦りながら問う。
「――もう無茶しないで。」
「悪い。」
動かない慎也の変わりに、泉は抱き付いた。
「――キスしても良い?」
「どうぞ、好きなだけ。」
甘えるように言う泉に、慎也は笑う。
ちゅ、ちゅ、と啄むように口付ける泉に、慎也は目を閉じる。
「――泉。俺が撃たれて泣いたか?」
「お生憎様。それぐらいじゃ泣かないわ。」
「クク。酷いヤツだ。」
その言葉に、泉は真面目な顔になる。
「――でも次は泣くかも。」
「気を付けるよ。」
そう言って二人は再度深く口付けた。
それを画面で見ていた志恩はふぅ~っと煙草を吹かす。
「ったくぅ。あのバカップル。こっちで見てんの忘れてんじゃないの?!」
丁度その時、扉が開く。
「すみません。分析官の唐之杜志恩さんはこちらに?」
「はいはい。どちら様?」
志恩が振り向けば、そこには朱がいた。
「昨日付けで刑事課に配属になりました常守朱です。」
「あぁ!慎也くんを撃った新任監視官ってアナタね?えぇぇ、思ってたよりずっと可愛い子!顔に似合わず思い切った事をするものね。何があったの?慎也くんにお尻でも触られた?――ま、それはないか。慎也くんには必要ないものね~。」
「え?」
朱が聞き返すように顔を上げれば、丁度モニターには抱き合っている二人が映った。