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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第13章 深淵からの招待


――さぁ、その手を離して。



「君は決してあの人ではないからあの人の代わりになんて出来ないんだけれども。」





「――その通りだ。人生設計、欲求の実現。今や如何なる選択に置いても、人々は思い悩むより先にシビュラの判定を仰ぐ。そうする事で人類の歴史に置いて未だかつてない程に豊かで安全な社会を我々は成立させている。」

立ち上がってデスクに向かう局長を追うように、宜野座も立ち上がる。

「だからこそ!シビュラは完璧で無ければなりません。」
「――然り。シビュラに間違いは許されない。それが理想だ。――だが、考えてもみたまえ。もしシステムが完全無欠ならそれを人の手で運用する必要すらないはずだ。ドローンにドミネーターを搭載して市内を巡回させれば良い。だが公安局には刑事課が存在し、君達監視官と執行官がシビュラの目であるドミネーターの銃刃を握っている。その意味を考えた事があるかね?」

その問いに、宜野座は一瞬言葉に詰まる。

「――それは、無論――。」
「如何に万全を期したシステムであろうと、それでも不測の事態に備えた安全策は必要とされる。万が一の柔軟な対応や機能不全の応急処置。そうした準備までも含めてシステムは完璧なるものとして成立するのだ。システムとはね、完璧に機能する事よりも完璧だと信頼され続ける事の方が重要だ。シビュラはその確証と安心感によって今も人々に恩寵をもたらしている。」
「――はい。」
「――宜野座くん。私は君と言う男を高く評価している。本来では君の階級では閲覧が許可されない機密情報だが、私と君の信頼関係に置いて見せてやろう。――他言無用だぞ。」

スクリーンに映し出された情報に、宜野座は目を見開く。

「――これは!」
「とある男の逮捕記録だ。彼は犯罪係数の計測無しに身柄を確保された。記録上はまぁ、任意同行と言う事になっているがな。」
「――藤間、幸三郎――!」
「3年前に世間を騒がせた連続殺人の被疑者だ。君達の現場では『標本事件』などと呼ばれていたようだがな。結局彼を取り押さえるに至った二係には徹底した緘口令が布かれた。」

その事実に宜野座は激昂する。
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