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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第13章 深淵からの招待


――今頃気付くなんて、なんてお笑い種。



「君を信ずる以外に他はなく、そもそも他は必要ない。」





「――悪くなってますね。」
「そうですか――。」

パチパチと音を立てて燃える暖炉を、宜野座は黙って見ていた。

「犯罪係数が7ポイント悪化。無視できない数値です。これ以上悪化する事があれば、報告義務が生じます。」

医師が宜野座のデータを見ながら淡々と告げる。

「ヒーリング系の装置でストレスケアはしているつもりなんですが――。」
「もっと単純且つ効果的な方法を取るべきです。」
「――それは?」
「親しい人に悩みを相談するんです。恋人や家族は?」

その問いに、宜野座は視線を反らす。

「恋人はいません。家族は――、父だけが存命です。」

窓の外では白い蝶々が優雅に飛んでいた。

「貴方の年齢ならお父様は理想的な相談相手ですよ。特殊な事情が無ければ話してみては?」
「――あるんですよ、特殊な事情。」

そう言って、彼は全てを悟ったように笑った。























「――報告書を読んだよ。常守朱監視官の緒言だが、あれは本当に信憑性があるのかね?」
「現場検証は入念に行いました。対象までの距離は8m弱。被害者との位置関係も明白です。犯行は明らかに常守監視官の目の前で行われ、そしてドミネーターは正常に作動しなかった。」
「被害者は常守監視官の親しい友人だそうじゃないか。動転してドミネーターの操作を誤ったのでは?」

局長の問いに、宜野座はキッパリと答える。

「彼女はそこまで無能ではありません。」
「経験が足りていないと以前の君の報告書にはあったな。」
「――だとしても素質は本物です。監視官としての彼女の能力はシビュラシステムによる適正診断が証明しています。」
「そのシビュラの判定を疑う旨の報告を、君達は提出しているわけだが?」

その言葉に、宜野座と局長の視線が交わる。

「――宜野座くん。この安定した繁栄、最大多数の最大幸福が実現された現在の社会を一体何が支えていると思うかね?」
「――それは。厚生省のシビュラシステムによるものかと。」

局長の手の中のブロックが再び動いた。
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