第12章 Devil's crossroad
――いっそこの手で。
「わたしは我が侭すぎたのね。あなたと引き離されるくらいに。」
「――彼女、協力するかね?」
「ま、狡噛はその辺俺より要領良いからな。それに泉もついてるし問題ないだろう。」
「あはは!ギノ先生、要領悪い自覚あったんだ?」
「うるさい!」
笑い飛ばした佐々山に、宜野座は問答無用とばかりにそう言った。
「――正直、北沢のイベントスペースを全て把握するのは不可能です。あの辺りはオーナー不在のまま放置されてるビルが多いので。そこを皆が好き勝手利用しているって言うのが実際のところ。昨日オープンしたスペースが今日には跡形も無いって言うケースもザラです。」
「イベントの開催日時や場所は、コミュニティ内の人間しか把握出来ないと言う訳か。」
「はい。――ただ中でも名の知れたスペースがいくつかあって、更にこれらを犯人達の行動記録に照らし合わせて絞り込めば。」
モニターを見ていた佐々山は、思わず口笛を吹く。
「――アナタ達の言う反社会的コミュニティが本当にあるのなら、彼らが拠点にしているのはイエローフッドか27クラブいずれかの可能性が高いと思われます。」
車の中で待機していた六合塚は無線から聞こえる声に違和感を覚える。
「――なんだ?」
「随分呑気なのね。」
「まぁ慣れてしまったんだろう。人間はどんな苛烈な状況でもそこに身を置き続ければ、全てを日常として呑み込んでしまう。」
宜野座の言葉を引き継ぐように、慎也は言う。
「俺然り、執行官然り。更生施設の潜在犯然り、な。」
「――何の話?」
「更生施設から正常な状態で社会復帰する人間は稀ってコト。ほとんどいないと言っても良いわ。抗菌反応で壊れるヤツ、サイコパスが悪化してそのまま処刑されるヤツ、色々いるけれどほとんどの潜在犯が”慣れる”のよ。」
「――”慣れる”?」
泉の説明に、六合塚は首を傾げる。
「あの場所で奪われ続ける生活に、ね。そうしてあの場所に沈み込んで行くのよ。勿論強い意志で乗り越えられるコトもアナタなら出来るかも知れないけどね?」
「――アナタ、良い性格してるって言われない?」
その言葉に、泉は楽しそうに笑った。
そして間もなく六合塚の知り合いであるリナがレジスタンスの一人である事が判明した。