第12章 Devil's crossroad
――どうせ滅びるのなら。
「あなたに逢えたらそれでよかった。叶わないって、知っていたけど。」
「元シビュラ公認芸術家、かぁ。今度の候補生は。」
「あぁ。」
走る車の中で、佐々山はデータを確認する。
「公認芸術家サマがなんでまた潜在犯に?」
「さぁな。ただ芸術活動にのめり込むうちに、色相が曇った例は多いと聞く。」
「へぇ。」
どこか興味の無さそうな佐々山に宜野座は尚も説明を続ける。
「芸術のような人を動かす強い想いは、薬にもなるが毒にもなると言う事だろう。だからこそ認可制になったんだ。」
「それで認可した芸術家が潜在犯堕ちしてたんじゃあ世話ねぇな。で?執行官になんの?この子。」
パネルには六合塚の映像が映し出されていた。
「――彼女は社会復帰を望んでるそうだ。」
「ふぅん。オメデてぇな。」
その言葉はどこか嘲笑を含んでいるように聞こえた。
「私に何が出来るって言うのよ?――何で私なの?執行官の適正があったから?」
「こう言う捜査には嗅覚が必要なのよ。刑事独特の嗅覚がね。シビュラはそれがアナタにあると判定したわ。これ以上の協力者はいないんじゃなくて?」
「――泉。佐々山達と戻らなかったのか?」
不意に会話に入って来た泉に、慎也は振り返る。
「――佐々山って?」
「ん?」
「待ちくたびれたって言ってた。」
「――あぁ。」
「執行官?」
「そうだ。」
慎也の返答に、六合塚は二人を見比べる。
「本当に連れ歩いてるのね。飼い犬みたいに。刑事の嗅覚じゃなくて、犬の嗅覚でしょ?嫌よ。そんな色相が曇りそうな事したくない。」
「――ここを出てまた音楽でもやるつもりなの?」
「関係ないでしょ。」
「随分熱心ね。23回もギターの弦を購入申請してるじゃない。爪も未だに丁寧に整えてるのね?」
嘲笑うような泉の言葉に、六合塚はカッとなった。