第12章 Devil's crossroad
――癒えない傷を隠した。
「僕がいつまでも、君を守ってあげるよ。僕の自己満足でね。」
~1年前~
「――珍しいな。お前がロック聴くの。」
「わ、吃驚した。慎也か。」
ヘッドフォンで音楽を聴いていた泉は、急にそれを取り上げられて驚いたように上を見上げる。
「弥生がオススメしてくれたの。結構カッコイイわよ。慎也も聴く?」
「そうだな。俺のにも落としといてくれ。」
「りょ~かい。あ、弥生!これ良かった!またオススメ教えてね!」
通り掛かった六合塚に、泉はディスクを振って見せる。
そんな泉の様子に、六合塚は少し笑ってその場を後にした。
~3年前~
『――弥生!』
「ッッ?!」
夢を見ていた六合塚は、その声で飛び起きる。
目が覚めたそこは潜在犯が隔離されている施設の自分に割り当てられた部屋だった。
『お早うございます。起床の時刻になりました。潜在犯の皆さん!今日も一日、色相浄化に努めましょう。』
館内にいつも通りのインフォメーションが流れる。
その声を聞きながら、周りの部屋の潜在犯達を六合塚は冷たい目で見つめていた。
その日、六合塚には来客が訪れていた。
「――執行官、ですか?」
「シビュラが君に『適正有』と診断を下した。潜在犯の君にはまたとない機会だと思うが?」
宜野座の言葉を泉は、横に持たれ掛かって聞いていた。
「それは――。もう私のサイコパスはおしまいって言う事ですか?」
その質問に、宜野座は黙ったまま表情を変えなかった。
「――伸元。ごめんね、突然。でも良かったら考えてみて?アナタ、外の世界にまだ未練があるのでしょう?」
割り込んだ泉の言葉に、六合塚はムッと来る。
「それどういう意味?」
「気に障ったのなら謝るわ。でも今のは褒め言葉よ。だってアナタの目、まだ曇ってないから。」
そう言って笑った泉#の顔はまるで彫刻のように完成されていて、六合塚は何故か恐ろしく感じてしまった。
黙った六合塚に、泉と宜野座は席を立った。