第11章 聖者の晩餐
――君の全てを欲していた。
「星屑を砕いて君の上に降らせよう。」
「――相変わらず、酷い趣味だこと。」
黙ったまま槙島を見る泉に、朱が叫ぶ。
「日向さん!お願い、止めて!彼女に罪はないでしょう?!」
懇願するが、泉は動かない。
その間にもドミネーターは非情にもトリガーをロックする。
「どうして――?!」
「何故かは僕にも分からない。子供の頃から不思議だったよ。僕のサイコパスはいつだって真っ白だった。ただの一度も曇った事は無い。この身体のありとあらゆる生体反応が僕と言う人間を肯定しているんだろうね。」
どこか嘲笑を含んだ声で槙島は答える。
「これは健やかにして善なる人の行いだ、と。」
「やめて!助けて!朱!」
髪を切られながら、ゆきが助けを請う。
「ゆき!日向さん!どうして――!」
「――あんまり泉を困らせないでくれないか。」
槙島はまるで宥めるように朱に言った。
「君達では僕の罪を測れない。僕を裁ける者がいるとしたら、それは――。自らの意志で人殺しになれる者だけさ。」
場に似合わない無邪気な笑みを浮かべる槙島に、朱は恐怖を感じる。
震える手で猟銃を手にする朱を泉は感情の篭らない目で見つめていた。