第11章 聖者の晩餐
――君は今、何を望むの?
「たとえば俺が死んだら、君はその亡骸を抱きしめて泣いてくれるのかい?」
その頃、朱と征陸がゆきの声を聞いていた。
その声を追って来れば、倒れている慎也の姿を見つける。
「――狡噛さん!」
「酷ェな。――ん?こりゃ、完璧な応急処置がしてあるが――。どう言う事だ?」
征陸が不思議そうに言いながらも、ドローンから救急箱を出す。
朱は慎也が何か伝えようとしている事に気付き、耳を傾ける。
「――もう一人いる。お前のダチを連れてった――。それから泉も――。」
「――?!日向さんが?!」
その瞬間、朱が走り出す。
「あ、おい!何、考えてるんだ!監視官!」
「まだ事件が終わってないんです!」
そう言って、朱は奥へと姿を消した。
「――まるで戦場。いや、処刑場だ。」
「こりゃ3人や4人なんてモンじゃない。数十人、いや――。下手したら百人近く死んでますよね。」
宜野座の問いに答えるように、縢が呟く。
「ここに狡噛が誘い込まれた。」
「大量殺人?虐殺?犯人の目的は?」
「ゲームじゃないっすか?」
「は?」
「え?あ、いやぁ。この地下にやって来た時からずっと感じてたんすよ。対戦ゲームのステージみたいだなって。」
縢の言葉に、宜野座は気に入らないとばかりに言う。
「バーチャルならともかく生きた人間を使ってゲームだと?!」
『こちらハウンド1!誰か聞こえるか?!』
その瞬間、征陸から無線が入る。
「こちらシェパード1!状況は?」
『ハウンド3を保護した。生きているのが不思議な有り様だ。犯人は人質を取って以前逃走中。シェパード2が単独で追跡を続行している。急いでくれ!――それから、元・シェパード0も一緒だと思われる。』
「――シェパード0って泉――?」
「クソ!了解した。その場を動くな。すぐに救援に向かう。どうやらそのクソッタレなゲームとやらはまだ終わっていないらしいな。」
その頃、朱は槙島の姿を見つける。
「止まりなさい!公安局です。武器を捨てて投降しなさい!――日向さん?!」
その声に、槙島が振り返る。
ゆきを前に出しながら、自分の後ろへと泉を隠すようにした。