第11章 聖者の晩餐
――それは、夢物語。
「生まれ変わる必要なんてないくらい、僕は何度でも君に恋をする。」
「常守監視官。征陸を連れて狡噛を救出しろ。ポイントは送った通りだ。俺と縢、六合塚は妨害電波の発信源を探し出す。――それから中に泉がいるはずだ。見つけたら保護しろ。」
「え?!日向さんが?!」
「ギノさん!泉がいるって本当なのか?!」
縢が目を見開くが、征陸は静かに言った。
「保護を拒否したら?」
「――その時は力づくで止めろ。泉にドミネーターは効かない。」
「――はい!」
それだけ言えば、朱と征陸が別行動を取る。
宜野座は舌打ちをしながら進んで行く。
「正直、何がなんだかサッパリだ。強力なジャミングに記録に無い地下空間。狡噛からの応援要請。」
「――それに消えたはずの泉、ですか?ただ事じゃないのは間違いないっすよ。」
「お前もそう思うか?」
珍しく縢の言葉に、宜野座は耳を傾ける。
「狡チャンのあんな声、初めて聞きました。マジで切羽詰ってた。――それに泉が狡チャンから離れたのだって可笑しいっしょ?もしかしたら――。」
「あぁ。もしかしなくても泉は何かを知っている。とにかく保護して聞き出すんだ。――手遅れになる前にな。」
背中を流れる冷や汗に、宜野座は唇を噛み締めた。
「――見つけた!慎也!」
「――?!泉?!」
突然飛び出して来た泉に、慎也は目を見開く。
だが泉は上から飛び降りれば、泉宮寺に向けて発砲する。
「何で君が――?!」
「悪いけど彼は殺させてあげるわけには行かないのよ!」
泉がそう叫んだ瞬間、ドローンが飛び出して来る。
「邪魔が入ったか。」
「慎也!早くドミネーターを!」
泉の言葉に、慎也はドローンからドミネーターを取り出す。
『ユーザー認証、狡噛慎也執行官。適正ユーザーです。対象の脅威判定が更新されました。執行モード、デストロイ・デコンボーサー。対象を完全排除します。ご注意下さい。』
慎也が振り返った時、泉の姿は既にそこには無かった。