第10章 メトセラの遊戯
――ごめんなさい、と言う言葉は嫌い。
「空よどうか晴れないで。僕が涙を忘れるまで。」
その頃、慎也は狩りの意味を悟り始めていた。
誘い込まれたのは自分だと言うこと。
ゆきの下着に隠されていたアンテナも見つけ出す。
風が吹き始めていた。
「この辺り、極所的だけどかなり強力なジャミングが掛かってますね。」
「妨害電波の発信源は?」
「南西の方角。ただマップ上だとこの区画何もないはずです。」
六合塚が答えれば、宜野座が頷く。
「良し。ここに中継基地を設営する。マップデータを信用するな。隙間と言う隙間を虱潰しに調べろ。それと狡噛は見つけ次第、ドミネーターで撃て。警告は必要ない。」
「――でも!まだ脱走と決まった訳じゃ!」
「その判断はシビュラシステムが下す。狡噛にやましいところがなければ、犯罪係数に変化は無い。パラライザー・モードで決着はつく。」
「マジに逃げる気だったんなら容赦なくエリミネーターが起動しますよね。」
「サイマティックスキャンは誤魔化せない。それで狡噛の本心が分かる。」
宜野座の言葉に朱が声を荒げる。
「殺しても構わないって言うんですか?!宜野座さん、友達だったんでしょ?!」
「これで狡噛が死ぬ羽目になれば、――常守監視官。全ては君の監督責任だ。君がちゃんと狡噛をコントロールしていればこんな事態にはならなかった。――どうだ?自らの無能さで人が死ぬ気分は?」
宜野座の辛辣な言葉に、朱は唇を噛み締める。
「なぁ、監視官。それくらいにしとこうか?ちょっと陰険過ぎるぜ?」
征陸はそう言えば、宜野座を持ち上げて投げ飛ばす。
投げ飛ばされた宜野座は呆然と征陸を見る。
静寂を破るように、慎也からのコールが響いた。
「――狡噛からです!」
『こっちの位置は探知出来るな?!現在コード108が進行中!至急、応援を!繰り返す!』
それを聞いた宜野座が叫ぶ。
「ありったけのドローンを急行させろ!」
「でも経路は?!」
「手当たり次第、試せ!1台でも良いから到着させるんだ!」
ドローンと一緒に朱達も中へと飛び出す。
その時、丁度宜野座の携帯が鳴る。
非通知の表示に、宜野座は眉根を顰める。
「――誰だ?!今、忙しい!」
『――伸元。手短に話すから聞いて。慎也の場所を送るわ。』
「泉?!」
聞こえて来た声に、宜野座は息を呑んだ。
