第10章 メトセラの遊戯
――絶対唯一の、きみ。
「空は大地を穿つように雨を降らせ続けるけれど、この体を縫いつけてはくれなくて。」
「――ともかく俺が様子を見て来る。そこで待ってろ。」
「でも!本当に罠なら危険です!」
「だからだよ。二人揃ってヤラれたら誰が助けを呼ぶ?」
朱の言葉を背中で聞きながら、慎也は地下へと続く階段を見つめる。
「すぐに応援を呼ぶべきじゃないんですか?」
「アンタが必要と判断したらそうしろ。あと武装の許可を頼む。」
「あ、はい。――常守朱。監視官権限により執行官の武装を申請。」
『声紋、並びにIDを認証。レベル2装備を認可します。』
ダッシュボードが開けば、慎也は武器を取り出す。
「ナビゲーションは任せる。ロケーションマップはあるよな?」
「データは古いですけど一応は。」
その答えを確認した慎也は地下へと降りる。
そこは廃墟と化した場所で、慎也は辺りを照らす。
『――誰かいますか?』
「――いいや。」
奥へと進んで行くと、無線の音が聞こえ辛くなる。
マップを見ていた朱は、異常を感じる。
「その奥は行き止まりです。狡噛さん。――狡噛さん?え、ちょっと――。何コレ、どういうこと?」
マップの中で慎也は道無き道を進んでいた。
「――おい、監視官!どうした?応答しろ。」
『――感度良好!そのまま進んで下さい。』
ようやく聞こえて来た朱の声に、慎也は再び足を進める。
「――なんだ、コイツは?」
『破棄された地下鉄路線です。車両を捜索して下さい。』
仕方なく車両に近付けば、いきなり車両が動き出し汚染水が流れ込む。
「――狡噛さん?!聞こえますか?応答して!」
その頃上では、朱が一生懸命無線に呼びかける。
「おい、監視官?!何がどうなってる?!」
『破棄された地下鉄路線です。車両を捜索して下さい。』
先程も聞いた言葉に、慎也の中で焦りが生まれる。
仕方なく中に入れば、そこには行方不明だった舩原ゆきがいた。
「――バカ。慎也。」
一部始終を見ていた泉はポツリと呟いた。
これから起こる事を知っているが為に。