第10章 メトセラの遊戯
――どこまで行こうか、例えば地の果てまで?
「救えない? 救うつもりもないくせに、優しい人のふりがお上手ね。…馬鹿みたい。」
その部屋は昔と一つも変わっていなくて、泉は笑った。
「先生?相変わらず真っ白な部屋がお好きなんですね。」
「ん?あぁ。だって白は何にも汚されないだろう?」
コポコポと音を立てながら、槙島は紅茶を煎れる。
それを見ながら泉はソファに身を沈めた。
「――3年前。何故、あの人を殺したの?」
「あの人?何の事だい?」
首を傾げながら問う槙島に、泉は苦笑する。
「先生に聞いても無駄でしたね。――質問を変えても?」
「うん。なんだい?」
カップを泉に渡してやれば、槙島は横に座る。
「――17年前。どうして私の家族は殺されたの?」
その質問に、槙島は何も答えなかった。
「――はい。そのメールが最後で。佳織も昨日から全然連絡が付かないって――。えぇ。何かあったらすぐに連絡します。」
「実家にも戻ってない、か。」
電話を終えた朱に、慎也が問う。
「そうみたいです。」
「悪戯の可能性は?」
「からかわれるのはしょっちゅうですけど。こんな悪質な事する子じゃありません。」
「――ま、行って確かめるのが一番だろうな。」
その言葉に、朱は言い辛そうに言う。
「――すみません。非番なのに。しかも日向さんの事があったばかりで――。」
「良いさ。――家にいたところでアイツは戻って来ないしな。」
どこか嘲笑を含んだ言い方に、朱は黙ってしまう。
「公私混同ですか、これって?」
「ギノに見付からなきゃ大丈夫さ。」
そう話している間に、車が目的地へと辿り着く。
「アンタの友達は普段からこんな場所をウロつくタイプなのか?」
「いえ、そんな。――ちょっと変ですよね?」
「明らかに変だろう。間違いなく罠だ。アンタ狙われてるぞ。」
「わ、私が?誰に――?」
「恨みを買うような覚えは?」
慎也は苦笑混じりに問い掛けた。