第8章 あとは、沈黙。
――それでも明日はやって来る。
「愛しいと紡ぐ度、気が触れていく。僕はもう、ぐちゃぐちゃになるくらいに。」
『ここはお前の母校なんだろう?どこか隠れられそうな場所はないのか?』
『なんで私が知ってると思うわけ?』
『だってお前、ワルイコトしてただろ?』
『――寮の裏手にゴミ処理施設があるわ。もしかしたらそこかも。』
携帯の動画を見ながら男は笑う。
「――ふぅん。彼が新しい止まり木、かな?」
思わず上機嫌に呟いた瞬間、後ろから声を掛けられる。
「柴田先生は音楽がお好きなのですか?」
「えぇ。いつも新しいアーティストを探しています。興味深い新人を見付けるのが本当に楽しみで。」
男は携帯を伏せながら、ニッコリと笑う。
「きょ、教頭先生!が、学園内から生徒の死体が!」
「な、なんですって?!」
職員室の教員が去ったのを見て、その男は監視カメラの画像を弄った。
「説明のつかない事が多すぎる。王陵璃華子の逃走経路。あの地下室の設備。どう考えても女子高生一人が賄い切れるものじゃない。今回も裏に何かある。」
宜野座が喋っている横で、慎也は監視カメラを見ていた。
「――可笑しい!」
「どうした?」
「破損してるデータがある。さっき六合塚が検索した時にはどの録画も無事だった。美術室のカメラのデータが集中的にやられてるな。」
データを復元しようと、慎也はパソコンを弄る。
「――全滅、か。」
「いや、コイツ!音声は修復出来そうだ。」
慎也がボリュームを上げれば声が聞こえて来る。
『何故、同じ学園の生徒ばかりを素材に選んだのかな?』
『全寮制女子学校と言うこの学園の教育方針を槙島先生はどうお考えですか?』
聞こえて来た名前に、慎也は顔を顰めた。
「――おい、今の――。」
宜野座の言葉に、慎也は辺りを見回す。
「――ギノ。泉はどこに行った?」
「さっきまでそこに――。泉?」
後ろにいたはずの泉がいつの間にか姿を消していた。
二人は顔を見合わせて息を呑んだ。