第8章 あとは、沈黙。
――君は嘘を拒んだ。
「嗚呼、雨が降っていますね。貴方を失った日も、こんな雨の日でしたよ。」
「王陵璃華子だと?!おい、泉!その情報はどこから得た?!」
宜野座が慌てて後を追う。
その頃、慎也と朱も桜霜学園に到着していた。
ドミネーターを構えたまま歩く泉に、教師が慌てて止める。
「日向くん!君の今の立場は分かっているつもりだが、君だって在籍していたんだから分かるだろう!生徒達はそう言ったものに慣れていない!刺激を与えて貰うのは困る!」
「申し訳有りません、先生。ですが、任務ですのでご理解を。」
「日向くん!」
「――泉!」
後ろから慎也に呼ばれ、泉はようやく口元に弧を描く。
「流石、慎也。自分で辿り着いたわね。」
「――行くぞ。」
ガラッと扉を開ければ、そこには王陵璃華子がいた。
「王陵璃華子、だな。」
「それがなにか?」
その瞬間、慎也がドミネーターを構える。
『犯罪係数、472。執行モード、リーサル・エリミネーター。慎重に照準を定め対象を排除して下さい。』
「何をする?!」
教師がその手を止めた瞬間、璃華子が逃走する。
「あ、待ちなさい!」
泉が後を追うが、生徒達の手引きに寄って彼女は上手く逃れてしまった。
「今すぐ学園全域を封鎖しろ!ありったけのドローンを動員だ!数が足りない?!なんとかしろ!」
忌々しそうに宜野座が叫ぶ。
「小娘一人探し出す事が出来ないってのはどういう事だ?!」
監視カメラに映らない璃華子に、宜野座が声を荒げる。
「仕方ないのよ、伸元。ここってば外からの侵入には厳しいけれど中の監視はザルなの。昔と一緒ね。」
卑下するように笑う泉に、慎也は視線を寄越す。
「ここはお前の母校なんだろう?どこか隠れられそうな場所はないのか?」
「なんで私が知ってると思うわけ?」
「だってお前、ワルイコトしてただろ?」
ニヤリと笑われ、泉は不服そうに視線を避けた。
「――寮の裏手にゴミ処理施設があるわ。もしかしたらそこかも。」
「よし、行くぞ!」
慎也は泉の手を引いて走り出す。
そしてその場から間もなく遺体が発見された。