第1章 犯罪係数
――焦がれた、真実。
「君がいない明日にも、もう慣れた。君のいた昨日は、振り返れないけど。」
「――慎也。今日は珍しく饒舌だったんじゃない?」
歩きながら不意に泉が楽しそうに言う。
慎也は横を歩く泉に視線を遣った。
「――別に。」
「常守監視官、可愛いからね。ああいうのが好み?」
からかうような言葉に、慎也は眉根を上げる。
「泉。帰ったら覚えてろ。」
「ふふ。怒っちゃやぁだ。」
捜査中だとは思えない軽口を叩く泉に、慎也はため息を吐く。
「――泉。あそこだ。」
「おっと。ビンゴ、ね。」
慎也が指差した先には、犯人と対峙する征陸と朱の姿があった。
「泉。どうする?」
「分かってるでしょう。行くわよ。」
その言葉に慎也は頷けば、走り出した。
丁度征陸が投げたドミネーターを犯人が構えたところで、慎也は呟く。
「――ご愁傷様。」
その瞬間、ドミネーターが作動した。
「ハウンド3、執行完了。」
「年寄りと新米を囮にするたァ良い根性してんなァ。えぇ、狡?」
「給料分の仕事だろ、とっつぁん?それにこれは俺じゃない。泉の命令だ。」
その頃、朱が人質の女性を説得していた。
それを見た征陸がドミネーターを構える。
「お嬢ちゃん。銃で確かめてみろ。」
『犯罪係数、オーバー160。執行対象です。』
「――まぁ、仕方ないわな。」
そう言って引き金を引こうとする征陸に、朱は飛び付く。
「やめてぇぇ!」
「何をする?!」
驚いた征陸に、朱は一生懸命訴える。
「あの人は保護対象です!」
「その為のパラライザーだろうが!今すぐ眠らせて確保するんだ。」
「彼女は混乱しているだけです!そんな乱暴しなくても!」
シビュラ判定を始めて恨んだ瞬間だった。