第1章 犯罪係数
――紡がれる、罪と罰。
「さようならと囁いて。それだけで救われたのに。」
『携帯型心理診断鎮圧執行システム、ドミネーター起動しました。ユーザー認証、常守朱監視官。公安局刑事課所属使用許諾確認、適正ユーザーです。』
朱がドミネーターを持てば、頭の中に声が聞こえて来る。
「あぁ、それね。思考性音声だから貴方にしか聞こえないわ。最初はうるさいと思うけどそのうち慣れるから。」
「あの!作戦は?ブリーフィングとか――!」
朱の言葉に、泉は笑う。
「必要ないわ。ネズミを狩るだけよ。」
「――怖い怖い。」
「何か言った?智己さん?」
ニッコリと笑った泉に、征陸は手を上げる。
「いや――。何でもない。では行きますか、日向監視官。」
「えぇ。さっさと片を付けるわよ。」
「え?!日向さん?!」
歩き出した二人に朱が声を荒げれば、後ろにいた慎也が歩き出す。
「俺達が獲物を狩りアンタがそれを見届ける。それだけのことだ。」
「いや、もうちょっと具体的に――!」
「まぁ任せとけって。俺達ァこう見えても専門家だからな。」
先を歩いていた征陸の声が聞こえる。
泉は既にだいぶ先を歩いていた。
「俺達には俺達の流儀がある。だがその責任を負うのは監視官であるアンタだ。だから俺のやり口が気に入らない時はソイツで俺を撃て。俺達も潜在犯だ。ドミネーターは起動する。」
「撃てって――!それに私はって言いますけど、日向さんだって監視官なんじゃ?!」
先を歩き始めた慎也を追いながら朱が言えば、彼は静かに答えた。
「――泉は俺のやり口を否定しない。絶対にな。」
「――狡噛さん?」
その絶対的な言葉に、朱は目を見開く。
「話は終わりだ。さっさと二人に追いつくぞ。」
けれど彼はこれ以上の会話をする気がないらしく、足早に2人を追った。
「遅いわよ。慎也、常守監視官。」
「悪い。」
「智己さん、常守監視官と右を行って。慎也は私と左。良いわね。」
泉の命令に、朱は慌てて頷いた。