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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第8章 あとは、沈黙。


――向こうに見えるのは僕らの滑稽な末路。




「わたしはね、あなたを愛して、幸せなつもりだったの。ただ、恋してただけなのに。」





学校中をドローンが捜索をする。
それを窓から槙島は見ていた。

「――警備体制。一段と厳しくなりましたね。」

件の犯人である、王陵璃華子は静かにそう言った。

「相次いで二人もの生徒が同じ手口の犯罪の餌食になった。これで学園側が何の対策も講じなければ保護者が黙っていないよ。加えて容疑者は元・教諭の藤間幸三郎。公安局の捜査の焦点もここ桜霜学園に絞り込まれる。」
「しばらく身動きは取れませんわね。」

その言葉に、槙島は璃華子の方を向く。

「何故、同じ学園の生徒ばかりを素材に選んだのかな?」
「全寮制女子学校と言うこの学園の教育方針を槙島先生はどうお考えですか?」
「時代錯誤ではあるがそれ故に希少価値がある――、かな?今の時代に尚も昔ながらのスタイルで娘に就学させたいと思うならここしか他に無い。」
「貞淑さと気品。失われた伝統の美徳。それが桜霜学園の掲げる教育の理念。男子には求められない女子だけに付加されるプライオリティ。それを刻み付けられた後で私たちは真相の令嬢と言うブランド品として出荷されそして良妻賢母と言うクラッシックな家具を求める殿方に購入される。『結婚』と言う体裁でね。この学校にいる生徒は誰もが淑女と言う名の工芸品に加工される為の素材なんです。磨き上げられ完成されるのを待つ原石。哀しくそして退屈な命ですわ。他に花開くはずの可能性はいくらだってあるのに。」

そう呟いた璃華子に、槙島は笑う。

「何が可笑しいんですの?」
「いや――。昔同じような事を言っていた女性がいたよ。そう。丁度この部屋で。君と同じように彼女も絵を描いていた。」

その言葉に、璃華子は筆を止める。

「――その方は今どこに?」
「遠く飛び立ってしまったよ。手元に置いておきたかったけれど翼を折る前に彼女は逃げ出してしまったからね。」
「――槙島先生はその方を愛してらしたのですか?」
「愛、と言うにはおこがましいな。きっと僕は彼女に幻想を求めていたんだ。君の言うところの淑女のプライオリティとやらを。」
「――クラッシックな家具を欲したのですね。」

自嘲気味に笑いながら再び槙島は外へと視線を向ける。
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