第7章 紫蘭の花言葉
――それでは、これにて。
「あなたって本当綺麗なのね。死蝋にして部屋に飾っておきたいくらい。」
「――先生はお変わりになられないわ。」
「君は変わったね、日向くん。――綺麗になった。」
優しく慈しむように言われ、泉は困ったように笑う。
「――もうあの頃みたいに騙されませんよ。」
「おやおや。酷いね。僕が君を騙したと?」
「事実でしょう?純真培養されていた私にワルイコトを教えたのは、槙島先生だったわ。」
その言葉に、槙島は楽しそうに笑う。
「――先日、公園で一つの遺体が見付かりました。」
「あぁ。ニュースで見たよ。3年前の猟奇殺人の再来だとね。」
「――同一犯だと?」
「違うのかい?」
槙島はまるで言葉遊びを楽しむかのように問う。
「先生の見解を聞きたくてお邪魔しました。」
「何故、僕の見解を?」
「――私の口から全てを言っても宜しいのですか?口に出したら私は貴方にこれを向けなければいけないくなる。」
そう言えば、泉はコートの下に隠したドミネーターを握る。
「怖いな、日向くんは。美人が凄むと迫力があるよ。」
「お戯れを。――先生。今回の一件は3年前のあの事件と何か関わりがあるのですか?」
泉がそう問えば、槙島は再びそっと彼女の頬に触れた。
「あの日。僕はなんで君を手放してしまったんだろうね。今になって後悔しているよ。」
「――後悔先に立たず、と言う言葉を送りましょうか?」
クスクスと笑う泉に、槙島はそっと立ち上がる。
「――昔のよしみで一つだけ。王陵牢一と言う画家を知っているかい?」
「名前だけは。彼が何か?」
「――この学園に彼の娘が在籍しているよ。因果とは怖いね。」
その言葉に、泉は立ち上がる。
「――お邪魔しました、槙島先生。」
「またいつでも遊びにおいで。」
ヒラヒラと手を振る槙島に、泉は哀しそうに笑った。
静かな部屋にクラッシックだけが流れていた。