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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第6章 狂王子の帰還


――懐かしいね、と笑ったのは痛いからよ。



「助けてよ。もう歩けないんだ。歩き方なんて知らないのに。」




「佐々山執行官?あぁ、そりゃ忘れられる訳ないわ。――標本事件は。」
「標本事件?」
「アタシらや現場じゃそう呼んでたんだけどね。朱ちゃん、プラスティネーションって分かる?」
「生体標本の作成方法、でしたよね?」
「そ。死体に樹脂を浸透させて保存可能な標本にする技術。あれを活用した猟奇殺人だったのよ。」

そう言って志恩が弄った画面には、画像が映し出される。

「バラバラに切り開いた遺体をプラスティネーションで標本にしてソイツを街のど真ん中に飾り付けてくれた訳よ。盛り場を飾るホログラフイルミネーションの裏側にね。」
「――酷い。」

思わず息を呑む朱に、志恩は続ける。

「何千人と言う通行人が環境ホロを眺めているつもりで実はその下に隠れているバラバラ死体とご対面してたって言う。バレた時のエリアストレスは4レベルも跳ね上がってね、報道管制まで敷かれた程よ。」

そう言いながら志恩は、更に画面を弄る。

「まぁ明らかに専門家の仕業だったからねぇ。捜査の焦点も薬学・化学のエキスパートに絞り込まれて行ったんだけど。その途中で佐々山くんがね――。結局全然別件で捜索願いの出てた高校教師のアパートからプラスティネーションの樹脂が見付かってね。あ!ホラ、コイツ。藤間幸三郎。コイツが失踪した途端に犯行も止まったし、まぁ間違いなく黒だったはずなんだけど状況証拠だけだしねぇ。まぁ実際のところは迷宮入り?それに藤間には化学の素養なんて無かったから、問題の樹脂を誰が調合したのかそれさえも謎のまま。」

画面を見ながら朱が問う。

「共犯者がいたって事ですか?」
「そもそも用途を承知の上で樹脂を作ったのかどうか、それすらも分からないんじゃ共犯と呼んで良いのやら?入手経路も謎なままだし、今となっては神のみぞ知るよね。」

志恩の言葉に、朱はずっと気に掛かっていた事を聞く。
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