第5章 誰も知らないあなたの顔
――愛してる、愛してる、でも嫌い。
「反吐が出る程甘ったるいスウィーツなんて目にも入れたくないのよね。」
泉と慎也の分析に寄り、犯人のアバターを特定する事が出来た。
「御堂将剛、か。サイコパスチェックは4年前の定期健康診断以来、ね。随分と後ろ暗い事ね。」
「常守監視官。狡噛と征陸を連れてホテルの部屋を調査だ。俺は縢と六合塚とで元麻布の自宅を当たる。」
「私は?」
「――日向監視官も常守監視官の方へ行ってくれ。」
エレベーターの中で酒瓶を取り出した征陸に、朱はギョッとする。
「な、なんでそれを?」
「違法ホログラムの対策には強い酒が一番なのさ。」
「ハタチになってからの豆知識だな。」
「――余計な事を教えないのよ。」
泉に注意されて、二人は思わず肩を竦ませた。
そして4人は御堂の部屋へと押し入る。
「公安局よ。御堂将剛。サイコパスの提示を要求するわ。出て来なさい。」
泉が言えば、部屋の中が一気にホログラムが変わる。
「これって!?」
「ホロコスどころか内装ホログラムまでクラッキングしてやがる!」
周りがパニックになったところを見計らって、御堂が逃げ出す。
「狡!」
征陸の言葉に、ライターを投げて渡す。
それを使って柾陸が炎を吹く。
「待ちなさい!」
『犯罪係数、335。執行モード、リーサル・エリミネーター。』
泉がドミネーターを撃つが、御堂はそのまま逃げ出す。
「泉!」
慎也が慌てて泉の後ろを追う。
「あれは痛覚遮断ドラッグやってるわ。あの怪我なら逃げ切れないと思うから後は伸元達に任せましょう。」
「――お疲れ。」
ポンと泉の頭を撫でれば、慎也は安心したように言った。
「――これで敵取れたわね?常守監視官。」
泉の言葉に、朱は哀しそうに笑った。
そうして間もなく、宜野座達から執行完了の連絡が来た。