第5章 誰も知らないあなたの顔
――そうしてまた、君は自分に嘘を吐く。
「嫌悪に味付けられたスープは不思議と甘くて。」
「――伸元。」
「泉か。狡噛についてなくて良いのか?」
慎也とは別行動を取る事にした宜野座は、泉が追い掛けて来た事に不思議そうに首を傾ける。
「慎也の方は常守監視官が行ってるわ。私がいたらお邪魔?」
「いや。助かるよ。だがお前は狡噛の方に行くと思っていた。」
その言葉に、泉は苦笑する。
「――慎也を許してあげてね、伸元。」
「――分かっている。悪いな。間に挟まれたお前が一番辛いのは分かってるんだ。」
クシャリと泉の頭を撫でれば、泉はフルフルと首を横に振った。
「私はどっちの罪も背負って上げられなかったから。――これが贖罪なのかも知れないわ。」
「あれはお前のせいでも誰のせいでもない。そうだろ?全てはヤツが自分で選んだ道だ。」
それは正論に違い無かったが、泉は頷く事が出来なかった。
それに気付いた宜野座は、それ以上何も言葉を発する事はしなかった。
「逆探では犯人はここからタリスマンのアバターを操作していた。この部屋だ。」
「誰が行く?」
マンションの下で泉が問えば、宜野座はドミネーターを手に持つ。
「俺と縢と六合塚だ。お前はここで待機。」
「分かったわ。気を付けてね。」
3人は頷けば、マンションの中へと入って行く。
その時、丁度泉のデバイスが鳴った。
「もしもし?慎也?」
『泉!今、どこにいる?』
「今、逆探知で割り出したマンションよ。さっき伸元達が突入しに行ったわ。」
泉が答えれば、慎也がスプーキーブーギーが偽者だと言う情報を伝える。
「――じゃあ、本当のスプーキーブーギーは。」
『あぁ。恐らく殺されているだろう。』
その瞬間、大きな爆発音が聞こえる。
「な、何?!」
爆発音の方を見れば、宜野座達が突入した部屋だった。
『泉、どうした?!』
「爆発したわ!後でまた連絡する!」
『おい、泉――!』
大きく舌打ちをすれば、泉はデバイスを放り出してマンションへと急ぐ。