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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第35章 過去編:名前のない怪物


ふかいふかい、まほうのもりの、そのまたおくの、ふしぎなしろで、おうじさまとおひめさまは、げんきにそだっていきました。
いっしょにくらしていたまほうつかいは、いつのまにか、きえてなくなってしまいました。
おひめさまはおおよろこび。
だって、おうじさまを、ひとりじめできるのですから。
おひめさまは、おうじさまにいいました。
「ねえ、おうじさまよくきいて。なにがあってもこのしろの、おそとにでてはいけないよ。」
「それはなぜなの、おしえてよ。」
おうじさまはききました。
「あなたはわたしだけのおうじさま。たいせつなたからもの。たからものなら、はこにいれて、だいじにしまっておかなくちゃ。」
それから、おひめさまは、けっして、おうじさまを、しろのそとへだしませんでした。
でもそれはしかたのないことです。
だっておひめさまは、おうじさまを、あいしていたのですから。
あるひ、おうじさまが、ことりをみつめていいました。
「ことりのとんでゆくさきに、なにがあるのかみてみたい。」
するとおひめさまは、ことりをつかまえて、そのはねをぜんぶむしってしまいました。
またあるひ、おうじさまが、まどをみつめていいました。
「ひろいおそらが、みてみたい。」
するとおひめさまは、しろじゅうのまどを、すべてふさいでしまいました。
でもそれはしかたのないことです。
だっておひめさまは、おうじさまを、あいしていたのですから。
おひめさまはこのまま、しあわせなひびがずっとつづくとおもっていました。
しかしなんということでしょう。おひめさまには、わるいまほうつかいの、のろいがかけられていたのです。
それは、おひめさまをあいするものは、たちまちしんでしまう、というのろいでした。
かわいそうなおひめさま。
おひめさまは、なきながら、おうじさまにいいました。
「ねえおうじさま、よくきいて、なにがあってもわたしのことは、けして、けして、あいさないで。」
――中略――
せかいはきらきらとかがやいて、なにもかもが、ふたりをしゅくふくしていました。
おたがいがいれば、このよに、たりないものなど、なにひとつなかったのです。
おうじさまとおひめさまは、ソレからもずっと、ふかいふかい、まほうのもりの、そのまたおくの、ふしぎなしろで、いっしょにくらしました。
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