第4章 誰も知らないあなたの仮面
――もがいて、もがいて、溺れる。
「一過性でも構わないから、君を愛おしいと錯覚させて、僕を癒してくれないか?」
「手としちゃ悪くないが、誰がやる?」
そうして朱と宜野座と泉が、再びアバターで接触をする事になった。
「なるほど。今タリスマンに成りすましている偽者は本物と遜色無い手際でこのコミュフィールドを2ヶ月間運営している訳か。興味深いな。」
その時、丁度タリスマンが現れる。
「見て。どうやらどこか違うコミュフィールドに移動するみたいよ。」
「よし。追うぞ。」
それを合図に、3人はタリスマンを追って移動する。
「――スプーキーブーギーのコミュフィールドですね。ここもかなりの大手ですよ。」
朱が言えば、スプーキーブーギーの前にタリスマンが姿を現す。
「気を付けて下さいね。ここの管理人、アナーキストで有名なんです。刑事だってバレたら厄介な事になるかも。」
朱が二人にそう言えば、宜野座が問う。
「葉山は――、タリスマンとは交流があるのか?」
「そりゃどっちも有名ですし。あ!いや、中の人が顔見知りかどうかは別ですけど。」
「アクセスログを洗いましょう。お互いが相手のコミュフィールドに頻繁に出入りしているようなら――。あら?朱ちゃん?」
「常守?」
気付けば、朱のアバターだけが姿を消していた。
「――オフ会?」
「えぇ。普段ネット上のコミュフィールドに集まっているユーザー同士が皆でソーシャルネットでのアバターと同じホロコスを被ってパーティをするんです。」
あれからスプーキーブーギーとチャットを終えた朱が報告をする。
「妙な事を思い付くモンだな。」
「で?そのイベントには間違いなくタリスマンも参加するのか?」
慎也の問いに、朱が頷く。
「あれで欠席したらタリスマンの人気はガタ落ちです。葉山公彦の代わりにタリスマンを演じているのが誰にせよあれだけ熱心にコミュフィールドの運営を続けてるんです。きっとオフ会にもタリスマンに成りすまして出て来るはずです。」
「どんなホロコスを被っていようとソイツが執行対象になるだけの犯罪係数が計測出来ればこっちのモノね。」
「――絶好のチャンスと言う訳か。」
泉が言えば、慎也と宜野座も頷く。
「で、場所は?」
「六本木のクラブ、エグゾゼです。」
舞台は整ったとばかりに、夜が訪れる。