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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第35章 過去編:名前のない怪物


公安局ビル内、執行官隔離区画――。執行官宿舎103。
無遠慮に扉を開ければ、慎也は徐に男の名を呼んだ。

「佐々山、いるんだろ?」

ソファで酒を煽っていた佐々山は気だるそうに声の方を振り向く。

「何故捜査会議に来なかった?」
「体調不良だって、とっつぁんから聞かなかったか?」
「体調不良の人間が、ベッドにも入らず酒かっくらってるわけか。」
「酒が一番効くんだよ、ほれ。」

そう言って琥珀色の液体がほんの少し入った小瓶を、慎也に放り投げる。慎也はそれを片手で受け取ると、そのままキッチンシンクへ置いた。

「――あれ?日向チャンは?」

大体いつも二人で行動しているからこそ、一人がいないのは目立つ。
佐々山の問いに、慎也は面倒臭そうに答えた。

「別行動だ。アイツは今桜霜学園に向かってる。」
「桜霜?なんで?」
「俺が知る訳ないだろうが。霜村監視官の命令だ。二係のヤマじゃないのか?」

その言葉に、佐々山は訝しそうに考え込む。
お説教を始めた慎也を手で制せば、グラスの酒を一気に飲み干した。

「被害者は無戸籍者。俺達一係はしばらく廃棄区画で身元特定だろ?違うか?」
「お前、何故それを――。」
「第二の被害者発見って知らせがあった時点で、身元不明だったろ。今の時代初手で身元が分からなきゃ大体そう言う事だ。ついでに霜村監視官殿は、自分の手柄にご執心。成果の上がらなさそうな無戸籍者の身元特定は、俺達一係におはちが回って来た。まぁそんなところだろ。んなわかりきったこと、わざわざ会議に出張って情報共有もねぇだろ。」


















「それで?急に桜霜学園になんて、どう言う事なの?」

桜霜学園に向かう車の中で、泉が問えば青柳は書類を出した。

「極秘ファイルよ。まだ口外しないで。緘口令が布かれてるわ。」
「――藤間、幸三郎?」

ファイルの中を見れば、重要参考人として一人の男性が浮かび上がっていた。

「桜霜学園の教師、か。――この人、どこかで――。」
「限りなく黒に近い白なのよ。」
「ふぅん。決め手が無くて手薬煉引いてるのね。」
「そう言うこと。学園内に何か有力情報があるかと思ってね。それでこの捜査よ。」

納得が行った泉は、窓の外へと目を移せば懐かしい校舎が見えて来た。
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