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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第35章 過去編:名前のない怪物


「結局、被害者の身元特定なんて言って、霜村監視官は俺達を事件捜査から遠ざけたいんだよ。体のいい締め出しだ。ま、せいぜい二係の足を引っ張らないように事に当たろう。」

宜野座は自分に言い聞かせるように言えば、慎也と泉に同意を求めるように視線を送る。

「言う程悪い状況じゃないさ、ギノ。犯人はあえて無戸籍者を狙ったんだ。ここから重要な手掛かりを見つけられる可能性は高い。」
「――お前、楽しそうだな。」

宜野座の唐突な指摘に慎也の思考がハタと立ち止まる。楽しそう?そうだろうか。

「あまり、執行官達に毒されるなよ。ただでさえお前は奴らと距離を詰め過ぎる。情報共有も結構だが。不可侵領域に頼み込むな。監視官の領分を忘れて、猟犬に成り下がるな。」

戒めるように言う宜野座だったが、続けて泉を見た。

「お前もだぞ、日向監視官。危なっかしくて見てられん。」
「私?私は大丈夫よ。知ってるでしょ?私のサイコパス。」
「――心配してるのはそこじゃない。まぁ良い。無闇な事をするなよ。霜村監視官のやり方に異議がないわけじゃないが、あの人は幹部候補生だ。わざわざ不興を買う必要もないだろう。」

そう釘を刺すと、宜野座は会議室を後にした。
残された泉と慎也も席を立とうとすれば、後ろに霜村がいた。

「――日向監視官。」
「はい。何か?」

珍しい事もあるものだと泉は目を見開く。
後ろには青柳がおり、泉はキョトンと目を丸くした。

「身元の特定をお願いしておいて申し訳ないんだが、君には青柳監視官と共に桜霜学園に行って貰いたい。」
「桜霜、ですか?」
「あぁ。少し調べて欲しい案件があってね。君は卒業生だと聞いた。あそこは伝統ある女学園だし君と青柳が適任だろう。」
「――かしこまりました。」

訝しそうなまま泉が頷けば、霜村は踵を返すように会議室を出て行った。

「ごめんね、泉。無理言って。」
「ううん。良いけど。桜霜に何があるって言うの?」
「それは行きの車で話すわ。狡噛くん。日向監視官、借りるわよ。」
「あぁ。」

不満そうに慎也の手が泉の腕を掴んでおり、青柳は苦笑する。

「しばらく別行動ね、慎也。気を付けて。」

泉はそう言えば、青柳と会議室を後にした。
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