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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第35章 過去編:名前のない怪物


「自分の女に手を汚して欲しくないってか?けどな、あの子をそんな風にしちまったのはアンタだぜ?狡噛監視官殿。」

カラカラとファンが回る音だけがやけに耳に入って来た。
佐々山を部屋に送り届けて、慎也は仮眠室へと向かう。
先程の佐々山の言葉を反芻しながら歩いていれば、青柳と擦れ違った。

「狡噛くん!余所見してると危ないわよ。」
「あ、すまん。」
「お疲れモードね。一係苦戦してるって聞いたけど?」
「まぁな。例の事件、広域重要指定事件になったらしいな。」

その言葉に、青柳は面倒臭そうに頷く。

「えぇ。お陰で明日からは恐らく合同捜査でしょ?頭痛の種が増えるわ。」
「なんだ?」
「おたくの飼い犬とウチの飼い主。相容れると思う?」

青柳の言葉に、慎也は佐々山と霜村を思い浮かべた。

「――無理だな。」
「でしょう?あら、泉は?」
「先に仮眠室に行かせた。俺ら今日は夜勤じゃないんだよ。」
「なんだ、そうなの。引き止めてごめんなさい。ゆっくり休んで。」
「サンキュ。」

ポンと肩を叩けば、慎也は仮眠室へと足を向けた。
殺風景な仮眠室へ入れば、泉が身体を丸くして寝ていた。
起こさないように横に入れば、慎也は器用に泉の身体を抱き締める。
この狭いシングルベッドに二人はきつかったが、どうしても抱き締めて寝たかった。
そんな慎也の想いが通じたのか、慎也の方に向けばそっと背中に腕を回した。

「悪い。起こしたか?」
「ううん。うつらうつらしてただけ。佐々山くんは?」
「檻に返したよ。扱い辛い飼い犬だ。」

ため息混じりに言えば、慎也はゆっくりと泉の背中を叩いてやる。
その振動が心地良くなれば、睡魔が襲って来た。

「――今日もお疲れ様。」
「あぁ、お前もな。今度の非番は海でも行くか。」
「ふふ。楽しみにしてる。」

その台詞に、慎也も満足そうに目を閉じた。
少なくともここ1ヶ月マトモな休みを取った記憶が無い。
常に人手不足の公安局な上に、殺人事件が後を立たなくなって来た。
安心・安寧のシビュラシステムの庇護下にあるはずなのに。
蠢き始めた何かが見えそうで見えない。
慎也はどこか気持ち悪さを拭えないまま、眠りに落ちた。
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