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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第31章 完璧な世界


――夢から覚める日。




「黄昏に飲み込まれた彼は、もう帰っては来ませんでしたとさ。」






『槙島聖護と日向泉の身柄確保については大変遺憾な結果となりました。』
「これで私は用済みってこと?」

シビュラシステムの元を訪れた朱は静かに言う。

『常守朱の能力評価については下方修正を余儀なくされます。――が、それによって貴方の存在価値がマイナスに転じる訳ではありません。寧ろシビュラシステムの運営上、貴方は依然として特出した価値を持つ個人です。』
「どう言う意味よ?」
『貴方の健康且つ、強靭なサイコパスと明晰な頭脳、判断力は来るべき新たな時代の市民に示す指標として充分な理想系と言えます。そして貴方はシビュラシステムに対し、完全に相反する感情的反感と理論的評価を抱いており、今尚その葛藤は継続している。そんな貴方を懐柔する手法が確立出来たなら我々は社会の統制を次の段階に進める上で、貴重なサンプルデータを獲得出来る事でしょう。』
「何を企んでいるの?」

訝しそうに問えば、シビュラは淡々と答える。

『目下の所、世論の情勢を鑑みてシビュラシステムの実体は完全に秘匿されています。短期的戦略としての隠蔽工作は現状ではまだ容易ですが、長期的視野に立った場合これは決して望ましい方針では無い。いずれ我々は偽らざる姿を公の物とするべきなのです。全ての市民がシビュラの正体を認識し了解した上で我々による統制を享受するようになる環境を整えること、この課題の達成は将来の人類社会により磐石な安定と繁栄をもたらす事でしょう。我々が引き続き貴方の動向を観察し解析する事は市民を懐柔し順応させる方法論を構築する貴重な手掛かりとなるのです。』
「そんなに上手く行くと思ってるの?」
『機密保持を脅かす兆候が無い限り貴方の生命と行動の自由は保証されるでしょう。協力的態度を期待します。自己保存の欲求に従えば貴方に選択の余地は無いはずです。』
「――そうね。犬死はゴメンだし。今の世の中がシビュラ無しでは成り立たないのも事実だし。」
『貴方の純望精神に基づく判断は信頼に価します。』
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