第31章 完璧な世界
――やがて、陽はまた昇る。
「死んだって構いやしないわ。少しばかりアンタが悼んでくれるならね。」
「そうか。――義妹の門出だ。止めはしないよ。」
「お兄ちゃん。私はお兄ちゃんが一緒に死んでと言うのならそうするつもりだった。」
その言葉に、槙島は苦笑する。
「――随分と魅力的なお誘いだけどね。遠慮しておくよ。あの世で日向教授に――、義父さんに怒られそうだ。」
そう言って、槙島は泉の頭を撫でる。
その時、後ろに人影を感じた槙島はフッと笑う。
「――なぁ、どうなんだ?狡噛。君はこの後、僕の代わりを見つけられるのか?」
槙島の問いに、慎也は苦笑混じりに答えた。
「――いいや。もう二度とごめんだね。」
慎也はそう言えば、銃を構える。
槙島はそっと泉の背を押した。
「――君は生きて。幸せになるんだ、泉。」
「お兄ちゃ――!私は――!」
伸ばした手を慎也は無理やり自分の方へ引っ張った。
「慎也――!」
「恨むのなら俺を恨め、泉。」
「――頼むよ、狡噛。義妹を――、幸せにしてやってくれ。」
静かな夜に、一発の銃音が轟いた。