第31章 完璧な世界
――そして、終幕。
「本当はこんなに好きになる予定じゃなかったんですよ。あんたって人は本当俺を振りまわしますね。」
「――尊くあるべきはずの法を最も貶める事は何だか分かってる?それはね、守るに価しない法律を作り運用する事よ!人間を甘く見ない事ね!私達はいつだってより良い社会を目指してる。いつか誰かがこの部屋の電源を落としにやって来るわ。きっと新しい道を見つけてみせる。シビュラシステム!貴方達に未来なんてないのよ!」
『――常守朱。貴方もまた日向泉と同じ事を言うのですね。』
「当たり前でしょう。日向さんは私と同じ人間だもの。あの人は誰より人間だったの。」
その言葉に、シビュラシステムは不敵な笑いを零した。
『常守朱。抗いなさい。苦悩しなさい。我々に進化をもたらす糧として――。』
二ヵ月後。
宜野座は監視官から執行官へと降格した。
征陸の墓参りに同行していた朱は横の宜野座を見る。
「つまんない事を聞いても良いですか?」
「ん?なんだ?」
「――メガネ。伊達メガネだったんですか?」
その言葉に、宜野座は苦笑する。
「自分の顔が嫌いでね。特に目元が。でももうどうでも良くなったんだ、今は。」
「――そうですか。宜野座さん。」
「今度はなんだ?」
珍しく饒舌に話す朱に、宜野座は首を傾げる。
「――狡噛さんと日向さん。生きていると思いますか?」
「あぁ。絶対にな。あれだけ生に執着してたんだ。今頃首輪が取れて自由気ままに生きているだろうよ。アイツらにはそっちの方が似合う。」
その言葉に、朱は頷いた。
「――いつかどこかでまた会えますかね?」
「さぁな。――運命が導けば、もしかしたら。」
「意外とロマンチストなんですね、宜野座さん。」
そうして公安局にいつもの日々が訪れた。