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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第30章 ステイルメイト


――絶望を知ったその先に。



「笑顔の眩しい人でしたから、顔なんてまともに見れもしないで。」




「科学が一人歩きをした訳か。」
「そう。そしてそこに目を付けたのが、当時の厚生省のトップ。決して表に出る事の無かった政府の人間達よ。」
「日本を法治国家から統治国家へと誘った。」
「でもそれで私達は、確かに『平和』を手に入れたわ。」
「――槙島は?どうして親父さんは、あの男を?」

泉はその問いに、首を振った。

「それは分からない。でも――、恐らくだけど義兄は何らかの理由で両親を早くに失った。多分それは両親の研究に関わっていたんだと思う。」
「だから引き取った?贖罪の為に?」
「父がそう言っていたのを聞いたわ。」

泉はそこまで言えば、3年前の事を思い出す。
標本事件のせいで、泉のサイコパスは一気に悪化した。
既に自分でコントロール出来る数値は当に逸脱していた。
隔離施設に送られて1年が経とうとしていた頃。泉はいつもの通り眠りにつこうと目を閉じる。
けれどその瞬間、扉が開くのを感じた。

「――誰?」

そこにいたのは、禾生だった。

「局長?」
「しばらくだな、日向くん。調子はどうだ?」
「相変わらずですけど。何故、こんな時間に?当に面会時間は終わりでは?」
「公安局の権力を使って少しね。来たまえ。君に見せたい物がある。」

そう言って、禾生は踵を返す。
泉は少し迷ったが、すぐに禾生の後を追った。

「――この1年は長かったか?」
「そうですね。何もせずに過ごした1年なんて今までにありませんでしたから。」
「狡噛慎也の件は――。」
「聞きました。執行官へ降格だと。」
「惜しい男を無くした。」

その言い方に泉は何も答えなかった。
やがて車が止まった場所に、泉は目を見開いた。

「ノナタワー?」
「こちらへ。君にはこれから真実を見せよう。」

そう言って禾生は泉にドミネーターを渡した。
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