第3章 飼育の作法
――彼と彼女の、絆。
「君がくれた何もかもをお返しします。だからどうか、消えてください。」
「え?!私、ですか?」
「朱ちゃんはどうするべきだと思う?」
泉の試すような質問に、朱は少し迷って答えた。
「――私はここで犯罪を見過ごすぐらいなら、狡噛さんの作戦を試すべきだと思います。」
「ですって?宜野座監視官。多数決よ。」
「正気か。――勝手にしろ。」
その言葉に、朱は不安そうに宜野座を見上げた。
「――日向監視官。宜野座さんと征陸さんって何かあったんですか?」
カツンカツンとハイヒールの音が響く。
朱の質問に、泉は苦笑する。
「朱ちゃん。それ伸元の前では禁句よ?」
「――はぁ。あ、狡噛さんの作戦って大丈夫なんですよね?話をするだけですよね?」
不安そうに問う朱に、泉は魅惑的に笑った。
「さぁ?伸元に言われなかった?執行官は所詮猟犬、ってね。貴方は上手く手懐けられるかしら?」
「――日向、さん?」
泉の言葉の意味を理解する前に、慎也が声を掛ける。
「泉。準備出来た。行くぞ。」
「はいはい。失敗したら許さないわよ、慎也。」
「分かってる。バックアップは任せたぞ。行くぞ、常守監視官。」
「あ、はい!」
それから間もなく、慎也に挑発された金原がドローンで二人を殺そうと尻尾を出した。
「慎也!秀星、行って!」
「ラジャ!うぉぉぉ!」
縢が金原を引き付けている間に、泉はドミネーターを二人へ投げる。
『鎮圧執行システムオンライン。ユーザー認証、狡噛慎也執行官。』
金原にドミネーターを向ければ、シビュラが判定を開始する。
『犯罪係数265、執行対象です。』
一発撃てば、慎也の口角が上がる。
『対象の脅威判定が更新されました。執行モード、デストロイ・デコンボーサー。対象を完全排除します。ご注意下さい。』
発射されたドミネーターの威力で、金原は排除された。
「――相変わらず痺れるねぇ。ドミネーターの本気は。」
縢の言葉を聞きながら、朱は呆然と慎也を見つめる。