第28章 正義の在処
――愛の終着駅で待ってるわ。
「俺は生きてるってそれだけで、アンタを裏切り続けてるんですよね。」
それから間もなく、元農学博士の管巻宣明が遺体で発見される。
現場に残されていた指紋から慎也の物が見付かるが、現場に向かった朱の手により紋声データが発見される。
そこに残されていたのは槙島の最後の目的であるバイオテロの概要だった。
『元・執行官の狡噛だ。このメッセージはもうしばらくしたらやって来るであろう公安局の刑事に向けて残す。被害者は元農学博士・管巻宣明。ハイパーオーツの疫病対策であるウカノミタマ防御ウイルスの開発責任者だ。日本の完全食糧自給に関わる最大の功労者だとされていた。槙島聖護は北陸の穀倉地帯を壊滅させる為のなんらかのアイディアを管巻教授から引き出しそして殺した。死体は目玉を抉られ、指は全て第二関節で切断。何らかのセキュリティを突破するのに必要なのかも知れない。防犯設備がサイマティックスキャンでは無く、まだ旧式の生体認証に頼っていた頃の古い施設。恐らくは管巻の研究チームが使っていた出雲大学のラボが怪しい。現在はウカノミタマウイルスの管理センターに転用されている。そこが槙島の標的と予想される。』
「穀倉地帯の壊滅――?!単独でバイオテロだと?!」
慎也の説明を聞いた宜野座は呆然と呟く。
「急ぎましょう!今ならきっとまだ間に合います!」
朱が力強く言う。
その頃、慎也と泉は槙島を追って出雲へと向かっていた。
「――ねぇ、慎也。約束して欲しいの。」
「ん?なんだ?」
ヘルメット越しの会話の為、慎也は聞こえ辛そうに言う。
「――、よ。」
「何だ?泉、聞こえない。」
「良いから。約束して。」
「――?分かった。良く分からんがお前が言うなら約束するよ。」
その言葉に、泉は哀しそうに笑う。
「約束、よ。」
『最後の時は、貴方がその手で私を殺してね。』
一足早く出雲大学のラボに辿り着いた槙島は、管巻の身体の一部を使い易々と中へと入り込んだ。
そこにあった穀物の生産機械に口角を上げる。
「――さぁて。始めようか。――君も来るんだろう?泉――。」
槙島はどこか楽しそうに呟いた。