第28章 正義の在処
――最後の君の笑顔が今も頭から離れない。
「もしあなたが覚えていたら、そのときは続きを教えてあげる。」
「――日向さん、お願い。戻って来て――。この事件、日向さんがいないと無理ですよ。宜野座さんだってもう――。」
『伸元のサイコパスがギリギリなのね?――バカなんだから。』
朱の言葉に、泉が呆れたように言う。その喋り方に朱は少しだけ笑った。
「日向さん、今どこですか?迎えに行きます。狡噛さんの事は私が何とかしますから。」
『――それは出来ないわ、朱ちゃん。私達には私達のやり方がある。分かって。』
「どうして――!」
『朱ちゃん。もうすぐ慎也が戻って来るから手短に言うわ。これからきっと私達と会う事になると思う。その時はすぐに慎也をパラライザーで撃って保護して頂戴。』
早口に告げる泉に、朱は嫌な予感を感じる。
「――日向さんは?」
『局長から聞いたでしょう?槙島聖護は私の義兄なの。義兄の後始末は私がつけるわ。』
「――日向さん、もしかして死ぬつもりなの?!」
その問いに、泉はややあって答える。
『――心配しないで。みすみす死ぬつもりはないわ。ただ私の人生はこの為に賭けて来たの。全てを終わらせられるなら命を賭けても惜しくないわ。』
「そんな!そんなコト、狡噛さんは望まない!」
『知ってる。だから朱ちゃんにお願いしてるの。慎也が私の為にバカな事をする前に必ず救ってあげてね。』
「日向さん!待って――!――もう!なんなのよ、二人して!私に――、重たい選択を押し付けないで――!」
言いたい事だけ言って切れたデバイスを、朱は泣きながら投げ捨てた。