第27章 透明な影
――真実は君のみぞ知る。
「長く艶やかな髪に触れて、キスしたいなんて邪な想いを、」
「あの日――。テンペストの詞を聞いた気がしたわ。『近いうちに差し向かいでご不審を解いて差し上げよう。そうすればここでの出来事はすべてなるほどと納得なさるはずだ。それまでは心楽しく、何ごとも良いほうに解釈なさい。』そろそろ真実を教えて欲しいのに――。」
静かな部屋に泉の声だけが響いた。
「なんですか、コレは?」
慎也の目に飛び込んで来たのは、シビュラに対する不満の声の書き込みだった。
「古いタイプの匿名掲示板だよ。海外のサーバーをいくつも経由して運営されている。」
「海外のサーバー?」
「あるところにはあるんだよ。だからシビュラシステムにも目を付けられていない。」
慎也の問いに、雑賀は一つのスレッドをクリックした。
「ここを使ってるのは元大学教授やジャーナリスト、評論家、文学者。シビュラシステムによって用済みになったとされた人々。今でもこう鬱憤が溜まると書き込む訳さ。シビュラなんてロクなモンじゃない。ここがこんなに問題だ、ってね。不毛かも知れないがこんな場所が無いよりは良いだろう。さっき食事の前に一つスレッドを立てて置いた。」
そう言って雑賀がクリックしたスレッドタイトルに慎也は目を見開く。
『5日間でシビュラシステムを完全崩壊させる方法は?』
「コレは――。」
「皆面白い遊びだと思って乗って来てくれてね。」
「どうにも馬鹿げた冗談ばかりに見えますが?」
スクロールして行く内容を見ながら、慎也はため息混じりに言う。
「ならお前が一番面白いと思った情報を探せ。お前と槙島は似た者同士だ。そのインスピレーションを信じて見ると良い。」
その言葉に、慎也は書き込みをスクロールさせて行く。
やがて一つの書き込みに目が留まった。
「どうした?」
「気になる書き込みが――。食料不足がシビュラシステムの崩壊?」
そう言いながら、続きをクリックする。