第27章 透明な影
――あいしてると言った君に、せめてもの報復を。
「お姉ちゃん、頼むから、僕をドギマギさせないで。」
その頃、泉と慎也は雑賀の元を訪れていた。
「ご無沙汰しております、雑賀先生。」
「とにかく入れ。」
そう言って、雑賀は二人を家の中へと入れた。
「ん?おいおい。銃まで持ってるのか?」
「分かりますか?」
「古臭いリボルバーであってる?」
雑賀の的確な問いに、慎也と泉は目を合わせて笑った。
「まるで超能力だ。」
「いつも言ってるだろう。観察力と論理的思考だよ。――狡噛。」
「もう全員に連絡が言ったと思うが、狡噛と日向が逃亡した。疑問の余地は一切無い。」
「――はい。」
席についた朱は、静かに頷いた。
「ヤツらは槙島を追うだろう。我々も追い掛ける。逃亡執行官と遭遇した場合は、速やかに処分しろ。」
「槙島は生け捕り、狡噛さんは即時処分――。」
朱の言葉に、宜野座は深く頷いた。
「そうだ。」
「狡噛の事を考えるのは今はやめないか?槙島を追い詰めれば自然に再会出来るだろう。それに泉ちゃんはどうする?」
「――日向さんは狡噛さんに拉致されたんです。見つけたら保護して下さい。」
「常守監視官?!」
突然強い口調で呟いた朱に宜野座が目を見開く。
けれども征陸は頷いた。
「了解、監視官殿。」
「――槙島はどこにいますかね?」
話を変えるように六合塚が言う。
「ヤツの顔は割れているが、暴動の余波で管理システムの何割かはまだ調整中だ。完全復旧までは後5日――。その間、フェイスレコグミションによる捜査は期待出来ない。」
「槙島はその間に行方を暗まし、高飛びの算段をするのでは?」
「いいえ!必ず仕掛けて来ます。あの男は追い詰められて諦めるようなタイプじゃない。最後の最後までこの世界を試さずにはいられない。システムに守られたこの社会にむき出しの人間性を突きつけて来る。そのつもりで狡噛さんにも挑発する電話を掛けたんです。槙島聖護――。」