第27章 透明な影
――正義が、終わる。
「そんな可愛い顔したって、ご褒美なんてあげないよ!(キスなんて!)」
慎也は暗闇の中で、ひたすらリボルバーを構える。
それをしばらく見ていた泉は、そっと立ち上がった。
「そろそろ行く?」
「あぁ。」
その言葉を聞けば、泉は側にあった写真を手に取った。
「ふふ。見て?伸元、可愛いと思わない?」
「今のアイツからじゃ想像も付かないがな。」
そこにあったのは、征陸と宜野座の昔の写真だった。
「――どうした?」
黙ったままの泉を不思議そうに慎也は尋ねた。
「思い出、か。私もそろそろけじめつけなきゃね。」
「――泉。」
声が低くなった慎也に、泉は苦笑する。
「大丈夫。もう慎也に隠し事はしないわ。雑賀先生のとこが終わったら行きたいところがあるんだけど良い?」
「行きたいところ?」
「――私の家よ。」
その言葉に、慎也は頷いた。
パーカーを着込んだ慎也は、倉庫に止めてあったバイクに口角を上げる。
「遠慮なく借りるぜ、とっつぁん。」
「色相が危険域にあります。犯罪係数はまだ変動値ですが、更に急激に悪化する可能性もある。これ以上色相を濁らせたまま放置すれば最悪の場合、潜在犯認定も有り得ます。」
その言葉に、宜野座は自嘲気味に笑った。
「ははは。いえね、相棒が昔今と同じ状況になった事を思い出しまして。」
「――その相棒さんは、どうなりましたか?」
「相棒では無くなった。――今は部下なんですよ。皮肉なものです。ああなるまいと保身に徹して来たと言うのに、その結果がこれでは全く――。」
「すぐに集中セラピーをセッティングします!職場の方にはこちらの方から――。」
「待って下さい!今はまだ困る。」
「宜野座さん!」
「先生。やり過ごしてみせますよ。」
席を立った宜野座に、医師は訴える。
「こちらとしては結果に責任は持てませんよ?」
その言葉に、宜野座は笑った。