第24章 水に書いた約束
――その日、恋人達は哀しい約束をしたの。
「この世界がもっと素敵に完成したら、僕のものになってくれるだろうね?」
「慎也。御飯、出来たわよ。」
「あぁ。今、行く。」
セーフハウスでの生活は場所が違うだけで、不気味な程穏やかだった。
それが束の間の幸せだと知っているからこそ、泉は毎日をいつも通りに振舞った。
「――泉。」
「ん?」
箸を止めた慎也に、泉は首を傾げる。
「結婚しようか。」
「――うん。」
「早いな、迷わないのか?」
即答した泉に、慎也は逆に目を見開く。
「なんで?だって私、6年も前からずっと待ってたのよ。遅いぐらいだわ。」
「それはすまなかったな。」
「――全部終わったら、慎也の望み通りに刑事をやめて妻になるわ。」
その言葉に、慎也は哀しそうに笑った。