第24章 水に書いた約束
――僕と一緒に沈んでくれますか?
「貴方の隣に当然のように経ってます。どけと云われるまで離れません。」
「――ッッ?!」
倒れた横を見れば、そこにはドミネーターを構えた泉がいた。
「日向――、くん!」
禾生が憎らしげに泉を見る。
「犯罪係数300以下の対象には、パラライザーモードが適用されるわ。伸元、そのドミネーターは壊れてるみたいだからすぐにメンテナンスに出した方が良いわね。」
「あ、――あぁ。」
「――禾生局長。狡噛執行官の処遇は私に任せて頂けますね?」
有無を言わさぬ泉の言葉に、禾生は踵を返した。
「良いだろう。――日向監視官。後は任せる。」
「はい。」
慎也を撃ったドミネーターを、泉は握り締めていた。
「――泉に感謝しなさいよ。中枢神経避けて足に当てたんだから。」
「フッ。相変わらずな腕前だな。――1個、質問。」
「はぁい?なんでしょ?」
煙草を吸いながら慎也を見れば、彼の目は解析中のヘルメットに向いていた。
「あのヘルメット、まだ使えるのか?」
「一応ね。でもシビュラシステムの完全復旧と共に対策プログラムが実装される予定。そうしたら後はもうフツーのヘルメット。」
「完全復旧まで?」
「あと6日?――証拠品、持ってくつもり?」
慎也の思惑が分かった志恩は、困ったように言う。
「捜査の為に必要なんだよ。」
「捜査からは外されてるくせに。」
「――こっちにも通達は来てるのか?」
「ん~、どうだったっけ?そういやまだ聞いて無かったかも?」
そう言ってマニキュアを塗っていた指で、志恩は解析を中断させる。
「絶対に外に持ち出さないでよね。」
「分かってるよ。」
慎也はそう言えば、ヘルメットを持ち上げる。
「ねぇ、慎也くん!」
「ん?」
「アタシさぁ、せめて一度ぐらいアナタと寝てみるべきだったのかなぁ?」
事も無げに問われた言葉に、慎也は笑う。
「止めとくよ。生憎と俺はアイツに出会って以来、他の女と寝たいと思わなくなったんでな。」
「ふふ。そうだよねェ。それにアタシも親友の男と寝る趣味は無いの。」
「――伝えとくよ。」
そう言って慎也は、分析室を後にした。