第24章 水に書いた約束
――私の命をいくらで買ってくれる?
「逆様に映り続ける世界中で、異物で遺物な君を見つける為にただ。」
その時、丁度禾生の元にアラートが入った。
「――日向監視官。少しこのまま付き合って貰うぞ。宜野座監視官が画策しているようだ。」
「――バカね。」
アラートの内容を知った泉は皮肉のように呟いた。
「手出しは無用だよ、日向くん。」
泉は否定も肯定もしなかった。
その頃。二係にトレードされようとしていた慎也を、ドローンが包囲する。
『コードK32ニ基ヅク特殊事例デス。狡噛慎也執行官ノ身柄ヲ拘束シマス。』
「こんな小賢しい計略で出し抜けると思ったなら、舐められたものだな私も。」
「アンタがそこまで熱烈な俺のファンだったとは意外だよ、禾生局長!」
嘲笑うかのように慎也が言えば、禾生も笑う。
「ここで減らず口を叩ける君の精神構造は全く以って理解に苦しむな。」
「局長!説明させて下さい!これは!」
宜野座と朱が慌てて走り寄って来る。
「いいや。説明には及ばない。宜野座くん!ここは口を開く程、墓穴を掘る局面では無いかね?個人の裁量に寄る判断も必ずしも咎めるべきものとは限らない。要は満足行く結果さえ伴えば良いのだ。評価の基準はそれだけだ。だからこそ危険な賭けに打って出る際は、引き際の判断が重要になる。自らの不始末をどれだけ速やかに、断固たる態度で清算出来るか。――さて、宜野座監視官。君の監視下にある執行官が今重大な背任を犯そうとしている訳だが。この場面にどう対処する?愚にもつかない弁明を並べ立てるより、もっと明晰で非の打ち所の無い決断力を示す事は出来るかな?」
試すような禾生の言葉に、宜野座はドミネーターを慎也に向ける。
『犯罪係数、265。刑事課登録執行官。任意執行対象です。』
「うん。結構。君は順当に自らの有用性を証明している。だが爪の甘さも否めない。」
そう言って禾生の手がドミネーターに触れた瞬間、パラライザーモードだったドミネーターが変化を遂げる。
「――さぁ。宜野座くん。君の責任者としての采配を、情に流されない決断力を私に見せてくれないか?」
息を呑んだ宜野座の目に、目を閉じた慎也が撃たれるのが見える。