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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第22章 鉄の腸


――それは、知りたくなかった現実。



「口約束を素直に信じて、ずっと貴方を待っていたのに。」




「いいや。限りなく公平だとも。民衆を審判し監督している我々は、既に人類を超越した存在だ。シビュラシステムの構成員たる第一の資格は、従来の人類の規範に収まらないイレギュラーな人格の持ち主である事だ。悪戯に他者に共感する事も、情に流される事も無く人間の行動を外側の観点から俯瞰し裁定出来る――、そう言う才能が望まれる。例えばこの僕、――君がそうであるように。」

その言葉に、槙島は酷く可笑しそうに笑う。

「ほぅ?」
「僕もね、サイコパスから犯罪係数が特定出来ない特殊な人間だ。お陰で随分と孤独な想いをしたものだ。そのようなシビュラの相違をしても計り知れないパーソナリティは、免罪体質と呼ばれている。凡弱な市民とは一線を隔す新たな思想と価値観の持ち主。そう言う貴重な人材を見つけて取り込む事で、システムは常に思考の幅を拡張し思性体として新たな可能性を獲得して来た。」
「そうか。公安局の手に堕ちた君が、処刑される事も無く姿を消したのは――。」
「あぁ。こうしてシビュラシステムの一員に加えられたのさ。初めは戸惑ったがね。すぐにその素晴らしさが理解出来た。」

楽しそうに話し続ける禾生を、槙島は冷たい目で見つめていた。

「他者の脳と認識を共有し、理解力と判断力を拡張される事の全能感!神話に登場する予言者の気分だよ。何もかもが分かる!世界の全てを自分の支配下に感じる。人一人の肉体が獲得し得る快楽には限度がある。だが知性がもたらす快楽は無限だ!――聖護くん。君なら理解出来るんじゃないか?」

禾生が問えば、槙島はふっと笑う。

「そうだな――。想像に難くないところではある。」
「僕も君もこの矛盾に満ちた世界で孤立し迫害されて来た。だがもうそれを嘆く必要は無い。僕達は共に運命として課された使命の崇高さを誇るべきなんだ!――君もまた、然るべき地位を手に入れる時が来たんだ。」
「――つまり。僕もまたシビュラシステムの一員になれ――、と?」
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