第22章 鉄の腸
――汝、裁かれるものなり。
「飛び立つ羽なんて、引き毟って暖炉にくべてやるわ。」
「まさか――!全て作戦だと?!泉を槙島聖護の元に囮として送り込んだ?!」
「そう言う事だ。あぁ、勘違いしないでくれたまえ。彼女は全て承知の上で行った。これは公正な取引だったんだよ。宜野座くん。」
宜野座は唇を噛み締めた。
「ふざけるな!納得の行く説明をしろ!」
公安局には慎也の怒声が響いた。
「執行官が偉そうに何様のつもりだ?!」
「そんな立場の話をしている場合か!俺達が逮捕したのに、取り調べも許されないなんて可笑しいだろ!」
「俺が決めた事じゃない。文句があるなら――。」
そこまで言って、宜野座は言葉を止める。
「『文句があるなら局長に直接言え』、か?執行官の俺が直接局長に会える訳ないだろう!実際に乗り込んで行ったら困るのはお前だ、監視官。」
「――ならば、自分の女を頼ったらどうだ?」
「はぁ?!」
慎也が苛立ったように言えば、宜野座は泉の警察手帳を投げて渡す。
「――コレは泉の警察手帳?!」
「日向監視官をここに呼べ。復職命令が出ている。」
「断る。アイツはもう――、刑事には戻さない。」
「それはお前が決める事じゃない。――そうだろう、泉?」
宜野座が入り口に視線をやれば、そこにはスーツを着た泉がいた。
「――ッチ!部屋にいろと言ったはずだが?」
不機嫌そうに言う慎也に、泉は苦笑する。
「退屈だったんだもの。――それにそろそろ復職命令が出ている頃かと思って。」
そう言えば、泉は慎也の側までくれば彼の手から警察手帳を奪い取る。
「――日向泉、本日より監視官として復帰いたします。」
敬礼をした泉に、宜野座はため息を吐く。
「――見ての通り、縢執行官が行方不明だ。どうする?」
「秀星はどこで行方不明になったの?」
泉が宜野座のデスクトップを覗く。
「ノナタワーの地下だ。唐之杜の話だと地下4階から消息が分からないそうだ。」
「ふぅん。――この分じゃチェ・グソンは死んだわね。」
特に感情の篭らない声で、泉が言えば宜野座が眉根を上げる。